初診日の病院が廃院・カルテなしでも障害年金を申請できる?

障害年金の申請を進めようとして、「初診を受けた病院がもう閉院していた」「問い合わせたら、カルテは残っていないと言われた」――そんな壁にぶつかる方は少なくありません。初診日が証明できなければ申請そのものが進まない、と思ってしまい、そこで諦めてしまう方もいます。

しかし、初診の病院のカルテが残っていなくても、障害年金の申請を諦める必要はありません。受診状況等証明書が取れない場合でも、別の資料や方法で初診日を認めてもらえる可能性があります。

この記事では、初診日の病院が廃院したとき、カルテが残っていないときに、どのように記録をたどり、どのような資料で初診日を証明していくのかを社労士が解説します。

障害年金の基本的な仕組みについては、こちらの記事で解説しています。

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初診日とは何か、なぜ証明が必要なのか

初診日とは、障害の原因となった病気やけがで、初めて医師または歯科医師の診療を受けた日を指します。診断名がついた日ではない点に注意が必要です。

初診日は、障害年金を受け取るための要件すべてに関わる大切な日付です。初診日の時点でどの年金制度に加入していたかで、障害基礎年金になるか障害厚生年金になるかが決まります。保険料の納付状況は、初診日の前日時点で判断されます。そして、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となります。

そのため、障害年金の申請では、初診日を書類で証明することが求められます。通常は、初診の医療機関に「受診状況等証明書」を作成してもらい、その証明書で初診日を証明します。

初診日の考え方そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

≫≫「障害年金の初診日とは?証明方法とよくあるつまずき」はコチラ

なぜカルテが残っていないのか

「病院に問い合わせたら、カルテがないと言われた」――これは珍しいことではありません。理由は大きく分けて2つあります。

カルテには保存期間がある

診療録(カルテ)には、診療が終了してから原則5年間の保存義務があります。そのため、初診から長い年月が経っている場合、医療機関がカルテをすでに廃棄していることは十分にあり得ます。特に、子どものころや20代のころの受診が初診日にあたるようなケースでは、当時のカルテが残っていないこともあります。

病院が廃院・閉院している

初診を受けた病院自体が閉院している場合もあります。閉院していると、その病院の窓口に証明書の作成を依頼することが難しくなります。ただし、閉院したからといって記録がすべて消えたとは限りません。別の医療機関が診療を引き継いでいる場合や、記録がどこかに保管されている場合もあります。まずは「もうない」と決めつけず、記録の行方をたどってみることが大切です。

まずやること:廃院した病院の記録をたどる手順

廃院・カルテなしと分かったら、いきなり申立書の準備に進むのではなく、次の順番で記録をたどってみましょう。

手順1:承継した医療機関がないか調べる

閉院した病院の診療を引き継いだ医療機関があれば、カルテや記録がそちらに移っている可能性があります。病院の跡地に新しい医療機関が開院している場合や、同じ法人の別の病院がある場合は、まずそこに問い合わせてみましょう。

手順2:転院先のカルテを確認する

初診の病院から転院した先の医療機関のカルテに、初診の病院での受診日や紹介状の内容が記録されていることがあります。現在の通院先や、途中で受診した医療機関にも、「前の病院の記録が残っていないか」を確認してみましょう。

手順3:手元の記録を洗い出す

診察券、お薬手帳、医療機関や薬局の領収書、紹介状、入院時の書類など、手元に残っているものをすべて並べてみましょう。受診の時期や医療機関名が分かるものがあれば、それが初診日を裏付ける手がかりになります。

手順4:健康保険の給付記録を確認する

健康保険の給付記録(レセプトを含む)には、医療機関での受診の記録が残っていることがあります。加入していた健康保険の保険者に問い合わせることで、過去の受診記録を確認できる場合があります。

カルテがなくても使える「客観的な資料」

受診状況等証明書が取れないときは、「受診状況等証明書が添付できない申立書」に、当時の受診状況を記入し、客観的な参考資料を添えて提出する方法があります。参考資料として挙げられるものには、次のようなものがあります。

  • 診察券
  • 医療機関や薬局の領収書
  • 障害者手帳や、その申請時の診断書
  • 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
  • 勤務先などの健康診断の記録
  • 健康保険の給付記録(レセプトを含む)
  • お薬手帳、糖尿病手帳、投薬袋
  • 母子健康手帳(障害の原因となった傷病についての記載がある場合)
  • 学校の健康診断の記録

大切なのは、「いつ、どこの医療機関で、どのような傷病で受診したか」が客観的に分かる資料を集めることです。1つの資料だけでは十分でなくても、複数の資料を組み合わせることで、初診日を裏付けられる場合があります。ただし、資料があれば必ず認められるわけではなく、内容や整合性に基づいて個別に判断されます。

参考:受診状況等証明書を提出するとき|日本年金機構

参考:障害年金の初診日証明書類のご案内|日本年金機構

それでも資料が見つからないとき:第三者証明と期間内証明

初診の医療機関の記録や、日付を特定できる資料が見つからない場合でも、第三者証明や、初診日が一定の期間内にあることを示す方法を検討できる場合があります。

第三者証明を利用する

初診日のころに受診していたことを知っている人に、証明してもらう方法です。20歳以降に初診日がある場合は、原則として第三者2人分の証明と参考資料を用意する方法があります。ただし、三親等以内の親族は証明者になれません。友人、知人、隣人、民生委員、当時の勤務先の上司など、初診当時の受診状況を知る人に確認します。

また、初診日頃に受診した医療機関の医師や看護師などが、当時の受診状況を直接見て知っている場合には、医療従事者1人による第三者証明を用意する方法もあります。

第三者証明があれば無条件に認められるわけではありません。誰が、いつ、どのように受診状況を知ったのかを具体的に示すことが大切です。初診日が20歳前かどうかなどによって必要な資料や取り扱いも異なるため、年金事務所や専門家に確認しながら準備しましょう。

参考:初診日に関する第三者からの申立書を提出するとき|日本年金機構

初診日が一定の期間内にあることを示す

初診日を1日に特定できなくても、「この期間のどこかにある」と示せれば、本人が申し立てた初診日が認められる場合があります。これを「期間内証明」と呼ぶこともあります。たとえば、健康診断の記録や手帳の交付時期などが、初診日のある期間を絞り込む手がかりになることがあります。

ただし、期間が分かれば必ず認められるわけではありません。その期間の年金制度への加入状況や保険料納付要件など、所定の条件も確認する必要があります。

なお、20歳前に初診日がある場合は、証明の取り扱いが異なります。20歳前の初診日については、別の記事で詳しく解説する予定です。

社労士の視点

カルテがなくても、手がかりになる資料は一つではありません

初診の病院のカルテがなくても、初診日が認められたケースは実際にあります。たとえば、初診の次に受診した医療機関(2番目の病院)に診療情報提供書が保管されていて、そこに初診の時期や医療機関名が書かれていたことで裏付けができたケースや、お薬手帳が手がかりになったケースがあります。これらはあくまで一例で、手がかりになる資料はケースによってさまざまです。

大切なのは、資料の種類ではなく、「初診の時期」と「医療機関名」が分かるかどうかです。何月何日という日付まで書かれていなくても、何年何月まで分かれば、そこから可能性が開けていくことがあります。

廃院と分かったら、まず本人に「物証」がないか探る

廃院・カルテなしと分かったとき、最初にやるのは、本人に何か資料が残っていないかを確認することです。領収書、診察券、お薬手帳、何でもいいので「何かありませんか」と探っていきます。まずは物証から当たっていくのが順序です。

本人に残っていなければ、家族や実家に当たってみます。調剤を受けた薬局に記録が残っていることもあります。あきらめる前に、当たる先は意外とあるものです。

医療機関へ資料を頼むときは、「前提」を丁寧に伝える

医療機関にとって、障害年金の申請のための資料請求というやり取り自体、それほど多いものではありません。唐突に「資料をください」と伝えてしまうと、意思疎通が難しくなることもあります。

「障害年金の申請をするにあたって、必要なものなんです」という大前提を、まずきちんと伝えること。それが、資料を集めるうえで意外と大事なポイントです。

第三者証明は、事情を伝えて「一緒に思い出してもらう」

第三者証明には難しい面もあります。三親等以内の親族は証明者になれません。また、症状があることは知っていても、「通院していたこと」まで知っている人は、実際には少ないのです。同級生の親御さんや当時の同僚などから、探していくことになります。

さらに、初診日がずっと前の話だと、証明をお願いする相手の記憶も曖昧なことがよくあります。そのため、まずは事情をきちんとお伝えして、当時どういう話をしたのか、どういう様子だったのかを、お互いの中で思い出してみる作業が必要になります。

日にちまで特定できなくても、可能性は残っている

初診日を何月何日まで特定できなくても、「一定の期間内にある」ということが証明できれば、可能性は開けていきます。その際はあわせて、保険料の納付状況も重要になってきます。

一方で、病院も時期もまったく分からないとなると、やはり難しいケースもあります。証明できずに申請を断念せざるを得なかったケースもあれば、初診の病院の証明書が取得できなくても、別の資料や方法によって初診日が認められたケースもあります。

障害年金は、金額的にも大きな話です。可能性があるのに、自分で「ない」と断定して数年が過ぎてしまい、本当に道が断たれてしまうこともあり得ます。「何年か前だったら可能性があった」ということにならないよう、まずは一度、プロに確認してみてください。

そして相談の際は、まず落ち着いて、全体像をゆっくり思い出しながら教えてください。見落としていること、忘れていることもあるかもしれません。その「思い出し」の中から、初診日につながる手がかりが見つかることがあります。

まとめ:廃院・カルテなしでも、申請を諦めないでください

初診日の病院が廃院した、カルテが残っていない――それだけでは、障害年金の申請を諦める理由にはなりません。

  • 承継した医療機関や転院先のカルテに、初診の記録が残っていることがある
  • 診察券、領収書、お薬手帳、健康保険の給付記録など、客観的な資料が初診日を裏付ける手がかりになる
  • 受診状況等証明書が取れないときは、「受診状況等証明書が添付できない申立書」に参考資料を添えて提出する方法がある
  • 所定の条件を満たせば、第三者証明や期間内証明という方法も検討できる

時間が経つほど記録は失われやすくなります。廃院・カルテなしと分かったら、早めに記録のたどり方を確認し、申請の準備を進めましょう。

初診日の証明に不安がある方は、一人で悩まずに障害年金に詳しい社労士にご相談ください。

障害年金の申請についてご不明な点などがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので遠慮なくご連絡をいただければと思います。

メール、LINE、お電話(土日も対応)、いずれの方法でも結構ですのでお問い合わせをお待ちしております。


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執筆者紹介

下斗米 貴彦
下斗米 貴彦
社会保険労務士 下斗米 貴彦
社会保険労務士法人 人財経営/仙台障害年金365日サポート

宮城県仙台市を中心に障害年金の申請支援を行い、これまでに障害年金に関する相談1,000件以上に対応しています。
うつ病・発達障害・双極性障害・統合失調症などの精神疾患をはじめ、さまざまな傷病の申請をサポートしています。
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