受診状況等証明書とは?取得方法と取れない場合の対応
障害年金の申請を進めようとして、最初につまずく方が多いのが「受診状況等証明書」という書類です。名前を聞いただけでは何のことか分からず、「自分で書く書類なのか」「どこの病院に頼めばいいのか」と戸惑うのも無理はありません。
受診状況等証明書は、障害の原因となった病気やけがで初めて医療機関を受診した日、つまり「初診日」を証明するための書類です。初診日は、どの年金制度に加入していたか、保険料の納付要件を満たしているか、障害の状態を判断する日(障害認定日)がいつになるかを決める起点になるため、申請の出発点ともいえる大切な日付です。
この記事では、受診状況等証明書とは何か、初診の医療機関への依頼方法、受け取ったら確認するポイント、提出が不要になる場合、そして取れない場合の対応を社労士が解説します。
障害年金の基本的な仕組みについては、こちらの記事で解説しています。
受診状況等証明書とは
受診状況等証明書は、障害年金の請求にあたって初診日を証明するために、初診時の医療機関に作成を依頼する書類です。通称「初診日証明」とも呼ばれます。
大切なのは、この書類は申請者ご本人が書くものではない、という点です。記載するのは、初診時の医療機関の医師で、医療機関の記録に基づいて記入します。ご本人の役割は、どの医療機関に依頼するかを手配し、様式を渡して作成を依頼することです。
証明書に記載される主な内容は、次のとおりです。
- 氏名(受診当時の氏名)
- 傷病名(障害の原因となった病気やけがの名前)
- 発病年月日
- 発病から初診までの経過
- 初診年月日
- 終診年月日(その医療機関での最後の受診日)
- 初診から終診までの治療内容と経過の概要
- 前医からの紹介状の有無
- 記載の根拠となった記録(後述する⑩欄)
ここで区別しておきたいのが、「発病日」と「初診日」です。発病年月日は、病気やけがが発病したと考えられる日で、実際に医療機関を受診した初診日とは一致しないことも多くあります。発病年月日が特定できない場合は、医師が「不明」や「不詳」と記載することもあります。
初診日の考え方そのものについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
≫≫「障害年金の初診日とは?証明方法とよくあるつまずき」はコチラ
初診日がずれることで何が変わるのか
初診日は、障害年金の受給要件のすべてに関わります。初診日の時点でどの年金制度に加入していたかで、障害基礎年金になるか障害厚生年金になるかが決まります。初診日の前日時点での保険料の納付状況が、保険料納付要件の判断材料になります。そして、原則として初診日から1年6か月を経過した日が障害認定日となります。
つまり、初診日が1日ずれるだけで、受給できる年金の種類や納付要件の判断が変わることもあります。だからこそ、記憶だけに頼らず、医療機関の記録に基づく証明書で初診日を確認することが大切なのです。
保険料納付要件については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
≫≫「障害年金の保険料納付要件|未納がある場合でも確認すべきこと」はコチラ
取得方法と手順
受診状況等証明書は、初めて受診した医療機関に依頼して取得します。現在通院している医療機関とは限らない点に注意してください。手順は次のとおりです。
手順1:初診の医療機関を特定する
まず、障害の原因となった病気やけがで、最初に医師または歯科医師の診療を受けた医療機関を特定します。複数の医療機関を受診してきた方は、現在の医療機関ではなく、いちばん最初に受診した医療機関が依頼先です。
どの医療機関が初診にあたるか分からない場合は、お薬手帳、診察券、領収書、紹介状など、手元にある記録を並べて、受診の順番を整理するところから始めましょう。最終的な診断名で初めて受診した日が、必ずしも初診日になるとは限りません。前の傷病と後の傷病に医学的なつながり(相当因果関係)がある場合は、前の傷病で最初に受診した日が初診日として扱われることがあります。迷う場合は、年金事務所や専門家に確認するのが確実です。
手順2:医療機関に連絡し、依頼方法を確認する
初診の医療機関が分かったら、電話などで「障害年金の申請のために、受診状況等証明書を作成してほしい」と伝えます。このときに確認しておきたいのは、次の点です。
- 作成を依頼する手順(来院が必要か、郵送でよいか)
- 様式はこちらで用意するのか、医療機関にあるのか
- 文書料(作成費用)がかかるかどうか
- 完成した証明書の受け取り方法
文書料は医療機関によって異なります。具体的な金額は、依頼先の医療機関に確認してください。
手順3:様式を入手して医療機関に渡す
受診状況等証明書の様式は、年金事務所で受け取ることができるほか、日本年金機構のホームページからダウンロードすることもできます。様式を医療機関に持参するか、郵送して、記載を依頼します。
依頼の際は、受診当時の氏名(結婚や離婚などで姓が変わっている場合は、当時の姓)、診療科、受診していたおおよその時期を伝えると、医療機関が記録を探しやすくなります。
手順4:完成した証明書を受け取る
完成した証明書を受け取ったら、そのまま提出するのではなく、まず内容を確認します。確認するポイントは、次のセクションで解説します。
つまずき:依頼する医療機関を間違えてしまう
よくあるつまずきが、「今かかっている病院に頼めばいい」と思い込んでしまうことです。現在通院している医療機関と、最初に受診した医療機関が同じ場合は問題ありませんが、異なる場合は、最初に受診した医療機関への依頼が必要です。転院を繰り返してきた方は、まず受診の順番を整理してから依頼しましょう。
つまずき:初診から年月が経っているのに、後回しにしてしまう
医療機関の診療録(カルテ)には保存期間があり、医師法では原則として5年間と定められています。初診から年月が経っているほど、記録が残っていない可能性が高くなります。申請を検討し始めた段階で、早めに依頼しておくことが大切です。「カルテがないと言われた」場合の対応については、後のセクションと次回記事で解説します。
受け取ったら確認すること
受診状況等証明書を受け取ったら、まず様式の⑩欄を確認してください。⑩欄は、医師がどの記録に基づいて初診日などを記載したかを示す欄で、初診日が確認できるかどうかに関わります。
⑩欄の選択肢は、次のとおりです。
- (1)診療録(カルテ)より記載したもの
- (2)受診受付簿、入院記録より記載したもの
- (3)その他(具体的な記録名)の記録より記載したもの
- (4)本人の申し立てによるもの
(1)から(3)のように、記録に基づいて記載されている場合は、その日付が初診日を確認するうえで有力な根拠になります。ただし、記録に、その医療機関より前に別の医療機関を受診していた記載がある場合や、相当因果関係のある前の傷病がある場合には、さらに前の受診日が初診日と判断されることがあります。
一方、(4)「本人の申し立て」のみに○がついている場合は、それだけでは初診日の証明にはなりません。様式の記入要領にも、その旨が明記されています。この場合は、記録に基づく証明ができないか医療機関に確認したり、ほかの医療機関の記録や参考資料を探したりするなど、追加の対応が必要になります。
そのほか、次の点もあわせて確認しましょう。
- 氏名、傷病名、初診年月日、終診年月日に誤りや食い違いがないか
- 診断書や病歴・就労状況等申立書と、傷病名や年月に説明のつかない食い違いがないか
- 発病年月日と初診年月日を混同していないか
診断書の依頼のポイントについては、こちらの記事もあわせてご覧ください。
≫≫「障害年金の『診断書』の重要性・依頼のポイントとは?」はコチラ
提出が不要になる場合
受診状況等証明書は原則として必要ですが、例外的に提出が不要と認められる場合があります。代表的なのは、次の二つのケースです。
初診の医療機関が診断書も作成する場合
初めて受診した医療機関と、障害年金用の診断書を作成してもらう医療機関が同じである場合は、診断書で初診日を確認できれば、受診状況等証明書は不要です。診断書のなかに初めて受診した日を記載する欄があり、診断書そのもので初診日を確認できるためです。
出生日が初診日とされる場合
先天性の知的障害は、出生日が初診日として取り扱われ、受診状況等証明書の提出は求められません。ただし、生まれつきの傷病がすべて出生日になるわけではありません。先天性の心疾患や網膜色素変性症などは、具体的な症状が出現して初めて診療を受けた日が初診日となります。発達障害も、自覚症状があって初めて診療を受けた日が初診日となるのが原則です。ご自身のケースが該当するかどうか迷う場合は、年金事務所で確認してください。
取れない場合の対応
初診の医療機関が廃院していたり、カルテが廃棄されていたりして、受診状況等証明書が取得できない場合でも、すぐにあきらめる必要はありません。ただし、対応のハードルは上がります。ここでは全体の流れを解説し、詳しい対応は次回記事で取り上げます。
まず、2番目以降の医療機関を確認する
初診の医療機関で証明書が取得できない場合は、2番目に受診した医療機関に記録が残っていないかを確認します。2番目の医療機関にも記録がなければ、3番目、4番目と順番に問い合わせ、記録が残っている一番古い医療機関を探して証明書の作成を依頼します。2番目以降の医療機関の紹介状や診療記録に、初診の医療機関からの紹介や受診の記載があれば、それが初診の受診を裏付ける手がかりになります。
それでも取れない場合は「添付できない申立書」と参考資料で申し立てる
初診の医療機関で証明書が取得できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」をご本人などが作成し、2番目以降の医療機関の証明書や参考資料とあわせて提出する方法があります。2番目以降の医療機関でも証明書が作成してもらえない場合は、ほかの参考資料による証明ができないかを検討します。
この申立書だけでは初診の証明にはなりません。申立て内容の裏付けとなる客観的な資料を、できるだけ集めることが大切です。参考資料の例としては、次のようなものがあります。
- 身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳と、その申請時の診断書
- 生命保険、損害保険、労災保険の給付申請時の診断書
- 事業所などの健康診断の記録
- 健康保険の給付記録
- お薬手帳、診察券、領収書(診察日や診療科が分かるもの)
- 紹介状
- 第三者証明(初診日当時の状況を知る方による証明)
これらの書類を添付すれば必ず初診日が認定されるわけではありません。日本年金機構が、書類全体の内容と整合性をもとに、個別に判断します。資料の組み合わせ方や、どの資料が有力な根拠になるかは、ケースによって異なります。また、初診日が20歳前にあるか、厚生年金の加入期間中にあるかなどによっても、証明の取り扱いが異なります。
廃院やカルテなしの場合の詳しい対応については、次回の記事で解説する予定です。
つまずき:カルテがないと言われて、その場であきらめてしまう
「カルテが廃棄されている」と言われても、あきらめるのは早いかもしれません。診療内容までは分からなくても、受診日だけが別の記録に残っているケースもあります。「日付だけでも記録がないか」と、医療機関に確認してみる価値があります。また、初診の医療機関だけにこだわらず、2番目以降の医療機関の記録もあわせて確認することが大切です。
つまずき:証明書が取れない医療機関の分を、そのままにしておく
初診日の確認に必要な医療機関の証明書を取得できない場合は、「受診状況等証明書が添付できない申立書」で、取得できない理由や確認した経緯を明らかにします。複数の医療機関で取得できない場合は、必要な申立書の範囲を年金事務所に確認し、それぞれの受診歴と取得できない理由を整理しておきましょう。
社労士の視点
初診日の証明でつまずいた相談は、実際にたくさんあります。ただ、その多くは、初診の医療機関の記録だけに頼らず、別の資料からたどることで前に進んできました。たとえば、お薬手帳に残っていた受診の記録や、別の医療機関に宛てた診療情報提供書(紹介状)などです。初診の病院のカルテが残っていなくても、手がかりは意外なところに残っています。あきらめる前に、手元と周辺の記録を一度洗い出してみることが大切です。
なお、初診の医療機関で受診状況等証明書を書いてもらえなかったとしても、まだ対策のしようはあります。2番目以降の医療機関の記録や、参考資料を積み上げていく道が残っているからです。一方、診断書を医師に作成してもらえない場合は、申請を進めるうえで大きな支障になります。だからこそ、準備に入る前に「記録が残っているか」「書類を書いてもらえるか」を、早い段階で確認しておくことが欠かせません。
費用と期間も、よく聞かれる点です。文書料も完成までの期間も、本当に病院ごとに異なります。書類の作成は人の手で行われているため、その医療機関が抱えている件数が多ければ、それだけ時間もかかります。完成まで1か月程度というのが一つの目安にはなりますが、あくまで目安です。文書料も、ある程度の金額がかかり、中には高額な医療機関もあります。
費用がかかるからこそ、大切なのは、金額と期間を早い段階で把握しておくことです。証明書や診断書にいくらかかるのか、出来上がるまでにどのくらいの期間がかかるのか。それを最初の段階で知っているか、最終局面になって初めて知るかで、申請の進め方は大きく変わってきます。特に事後重症による請求では、支給は請求した翌月分からとなるため、手続きが長引くと受給開始が遅れ、受け取る総額にも影響することがあります。
様式については、年金事務所で受け取るのが一番楽だと思います。必要な書類が冊子としてまとまっているからです。日本年金機構のホームページからダウンロードできる様式も、中身は同じものです。ただ、現場でよくあるのは、「だいぶ前に様式をもらったけれど、どこに行ったか分からない」「もらったまま手をつけていない」というケースです。もらった時点で止まってしまっては、意味がありません。
初診日は、障害年金のもっとも重要な日付の一つです。しかも、その定義を誤解している方は非常に多くいます。初診日がいつかによって、申請できるかどうかが変わってくることもありますし、正直なところ、私たち専門家でも、診療科によっては判断に迷うことが今でもあります。ここでつまずいた場合は、一人で悩まず、プロに相談してください。
まとめ:初診日の証明は、申請の出発点です
受診状況等証明書は、初診の医療機関の医師が、医療機関の記録に基づいて作成する、初診日を証明する書類です。ご本人が書くものではありませんが、どの医療機関に依頼するかを手配し、様式を渡して作成を依頼するのは、ご本人の役割です。
取得のポイントを振り返ります。
- 依頼先は、現在通院している医療機関ではなく、いちばん最初に受診した医療機関
- 様式は年金事務所で受け取るか、日本年金機構のホームページからダウンロードする
- 受け取ったら、⑩欄の記載根拠と、氏名・傷病名・年月日の食い違いを確認する
- 初診の医療機関が診断書も作成する場合や、出生日が初診日とされる場合は、提出が不要になることがある
- 取れない場合でも、2番目以降の医療機関の記録や、添付できない申立書と参考資料による申立ての道がある
「どの病院が初診にあたるか分からない」「初診の病院にカルテがないと言われた」という方は、一人で抱え込まず、早めに相談することをおすすめします。当事務所では無料相談のほか、1分で受給の可能性を確認できる無料受給診断もおこなっています。ご家族からのご相談もお受けしていますので、まずはお気軽にご相談ください。
障害年金の申請についてご不明な点などがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので遠慮なくご連絡をいただければと思います。
メール、LINE、お電話(土日も対応)、いずれの方法でも結構ですのでお問い合わせをお待ちしております。
※診療録の保存期間については、医師法第24条(原則5年)によります。
執筆者紹介

-
社会保険労務士 下斗米 貴彦
社会保険労務士法人 人財経営/仙台障害年金365日サポート
宮城県仙台市を中心に障害年金の申請支援を行い、これまでに障害年金に関する相談1,000件以上に対応しています。
うつ病・発達障害・双極性障害・統合失調症などの精神疾患をはじめ、さまざまな傷病の申請をサポートしています。
当サイトでは、実際の相談・申請支援の経験をもとに、障害年金の制度や申請時のポイントを分かりやすく解説しています。
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