【社労士が解説】障害年金とうつ病について
うつ病は、日本人の生涯において約15人に1人が体験する疾患だと言われています。そのため、誰でも陥る可能性があります。しかし、うつ病になると意欲の低下や憂うつ感を始め、激しい疲労感や頭痛などが生じることがめずらしくありません。このような状況になると、仕事や家事をするのが困難になり、生活のしづらさや経済的な問題が顕著になるケースも多々あるでしょう。
今回の記事では、うつ病で悩んでいる方が利用できる障害年金について解説します。
- ①うつ病の症状
- ②障害年金とは
- ③うつ病で障害年金を利用するには
①うつ病の症状
うつ病は、精神と身体にさまざまな不調が生じる精神疾患です。主な症状は、以下のとおりになります。
1.精神的症状
・不安感や憂うつ感
・ちょっとしたことでイライラしてしまう
・さまざまなことに対して、過剰に心配になる
・意欲が低下する
・前向きに考えることが難しくなる
・死にたいと思う気持ちが生じる など
2.身体的症状
・激しい疲労を感じるようになる
・食欲が低下する
・不眠に陥る
・頭痛、肩こりがひどい
・胃腸の調子が悪くなる
・微熱が続く など
うつ病ではなくても、上記のような特徴が見られるケースもありますが、これらの症状が2週間以上続くようであれば、うつ病の可能性が高まると言われています。
②障害年金とは
障害年金は、原則的に20歳以上~65歳未満で身体・知的・精神に障害を抱えており、労働の制限や生活のしづらさが生じている方が受給できる制度です。障害年金には、障害年金と障害厚生年金の2つの種類があります。障害基礎年金は、国民年金加入者が、障害厚生年金は厚生年金加入者が受給できるしくみです。
また、障害年金は1級~3級(3級は厚生年金加入者のみ)までの等級があり、数字が小さいほど、障害の程度が重くなります。
一方、障害年金の年間受給額は、次のとおりです。
障害基礎年金
障害基礎年金の受給額についてはこちらをご覧ください。
障害厚生年金
障害厚生年金は1級~3級までありますが、平均的に障害基礎年金より受給額が大きくなるとされています。しかし、本人が厚生年金に加入していた期間などによって変動することを覚えておきましょう。
③うつ病で障害年金を利用するには
うつ病は障害年金の受給対象になりますが、すべての方が該当するわけではありません。障害年金を希望する方は、以下の条件を満たしていることが必要です。
1. 初診日より1年6ヶ月以上が経過している
うつ病の方が障害年金を受給するためには、メンタルの不調が生じ、初めて病院を受診した日(初診日)から1年6ヶ月以上を経た場合に対象となります。また、原則的にうつ病の治療を続けてきたけれども、完治せずに症状が固定したケースが該当することを覚えておきましょう。
初診日から1年6ヶ月以上経過した日が障害認定日とされ、障害年金を申請する際は、この日にちを明確にしなければなりません。
2. 国民年金保険料を2/3以上納付している
障害年金の財源のひとつは、国民年金となっています。そのため、受給を希望する方は、初診日を含む月の前々月までに国民年金の保険料を2/3以上支払っていることが必要です。
2/3以上の計算の中には、国民年金保険料の猶予期間や免除期間なども含まれます。
3. 障害認定基準に該当している
障害認定基準は厚生労働省が認定した、障害とみなされる傷病のことを言います。原則的に、この基準に基づいて障害年金の受給の有無や等級が決定します。
うつ病は精神の障害に分類され、障害の状態や生活のしづらさの程度などが総合的に判断されます。
まとめ
うつ病になると、仕事や日常生活において、さまざまな問題や課題が発生することが少なくありません。しかし、経済的問題を緩和し、治療に専念できれば、ストレスが少ない生活を送ることが可能になります。このような意味で、障害年金の受給はうつ病の方の生活の質を高めることも期待できるでしょう。
ただ、障害年金の申請は複雑で準備に時間がかかる場合も多いため、必要以上の労力が求められます。自分だけで申請するのは不安があるという方は、社会保険労務士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
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