【社労士が解説】脳性麻痺で障害年金を申請する際のポイントを解説します
目次
脳性麻痺の方は、一定の要件を満たせば障害年金を受給できます。
今回は脳性麻痺の方が、障害年金を申請する際のポイントについて解説していきます。
脳性麻痺とは
脳性麻痺とは、出生前・分娩中・出生直後の間に何らかの原因で脳が損傷を受けることにより、運動障害などの後遺症が残ることを言います。
原因不明のものもありますが、主な原因として感染や低酸素、脳血管障害、核黄疸などがあります。
出生後すぐの診断とはならず、2・3歳になって乳幼児健診や小児科を受診した際に診断をうけることがほとんどです。
脳性麻痺に対する根治療法はありませんが、損傷を受けていない脳の機能を十分に活かしたリハビリテーションをはじめ、薬剤療法や手術を行うことで改善がみられる場合があります。
脳性麻痺の症状
脳性麻痺の症状は四肢の麻痺や不随意運動、筋肉の緊張による反り返りやバランスの悪さなど、運動障害が主となります。
運動障害の程度は、損傷を受けた脳の部位によって違いがあり、ぎこちなさ程度の軽度のものから、装具や車いすなどの補助具が必要になる重度のものまでさまざまです。
脳の運動野以外の部位も損傷を受けている場合は知的障害、行動障害、視覚障害、嚥下障害、難聴、 けいれん性疾患などがみられます。
脳性麻痺における障害年金とは
障害年金とは原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった方が、以下3つの要件を満たせば受給できる公的年金です。
- 初診日(初めて医療機関を受診した日)証明要件
- 年金保険料納付要件
- 障害等級該当要件
障害年金制度における脳性麻痺は先天性疾患として扱われます。
初診日が20歳前の場合は年金を納付する義務がないため、年金保険料納付要件は問われません。
20歳前傷病では「障害基礎年金」の受給となり、受給するためには障害等級の1級または2級に該当する必要があります。
身体障害者手帳とは異なる制度であり、身体障害者手帳の等級と障害年金の等級が同じになるとは限りません。
脳性麻痺の障害認定基準
運動障害が主な障害である脳性麻痺は、ほとんどの場合「肢体の障害」として申請します。
関節可動域、筋力、巧緻性、速さ、耐久性を考慮し、日常生活における動作の状態から身体機能を総合的に判断した上で認定されます。
補助具を使用している場合は、「補助具なし」の状態でどの程度できるかが判断基準です。
日常生活における動作の基準は、つまむ、握るなどの手指の機能、排泄時や更衣動作の際に必要な上肢の機能、歩行などにおける下肢の機能です。
日常生活における動作のすべてが「一人で全くできない場合」は1級。
「一人でできてもやや不自由な場合」は、その程度によって2級となります。
併合認定で上位等級となる可能性がある
運動障害の他にも障害がある場合、複数の障害を掛け合わせて申請することにより上位等級となる場合があります。
これを併合認定といいます。
例えば、知的障害や発達障害がある場合、それぞれ単独では受給対象外でも、「肢体の障害」と「精神の障害」2つの申請を同時に行うことで、受給できる可能性があるのです。
脳性麻痺で障害年金を申請する際のポイント
障害年金はすべて書類審査で行われます。
よって障害の程度が、書類内容に明確に記載されていなければなりません。
以下に、脳性麻痺で障害年金を申請する際のポイントを解説していきます。
初診日証明をあきらめない
障害年金制度における脳性麻痺は先天性疾患とされていますが、「初診日」は証明しなければなりません。
脳性麻痺は多くの場合、2・3歳頃の乳幼児健診や、小児科を受診した際に診断されるため、初診時の医療機関と、診断書作成を依頼する医療機関が違う場合もあるでしょう。
この場合、初診時の医療機関で「受診状況等証明書」を記載してもらうことで初診日を証明します。
カルテの保管期間は基本的に5年なので、カルテが破棄されていたり、医療機関自体が閉院していたりして、受診状況等証明書の取得が難しい場合もあります。
しかし、診察券、お薬手帳、母子手帳、障害者手帳申請の際の診断書、領収書、第三者証明など、いろいろな資料を基に初診日の証明が可能です。
簡単にあきらめず、初診日証明の手がかりとなるものを探しましょう。
重要書類は「医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」
申請にあたり、等級を左右する最も重要な書類は「医師の診断書」と「病歴・就労状況等申立書」です。
診断書の作成を依頼する際は、日常生活において支障がでている部分を、医師に明確に伝える必要があります。
しかし診察時だけでは、すべてを伝えるのはなかなか難しいこともあるでしょう。
事前にメモにまとめておくなどをして、伝わりやすいよう工夫することも大切です。
「病歴・就労状況等申立書」とは脳性麻痺に関連する症状が出現してから現在に至るまでの経過について、ご本人・ご家族が記載する書類です。
脳性麻痺ではほとんどの場合、初診日が幼少期であるため、申請の際は幼少期から現在に至るまでの経過を振り返らなければなりません。
診断書の内容とズレがあると、不支給に繋がります。
診断書を受け取ったら内容を確認し、診断書だけでは伝えきれない部分を補足するような形で、詳しく記載しましょう。
まとめ
障害年金制度は複雑な制度であり、申請も大変な作業です。
よくわからない、難しいからと諦める方もいます。
しかし障害年金が受給できるようになると、生活への負担が軽減できるかもしれません。
脳性麻痺の程度が軽度でも、併合認定により受給できる可能性があります。
あきらめず、申請を検討してみてください。
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