【社労士が解説】精神障害における若年性アルツハイマーとは?障害年金を申請する際のポイントとは?
目次
こんにちは社会保険労務士の下斗米です。
精神障害のなかでも今回は、認知症の一種である若年性アルツハイマーの方向けに障害年金について解説します。
若年性アルツハイマーとは
18歳~64歳までに発症するアルツハイマー型認知症のことを言います。
アルツハイマー型認知症とは、何らかの原因で神経細胞が徐々に減り、記憶をつかさどる海馬(かいば)を中心に、広範囲で脳が萎縮することにより発症する認知症です。
若年性であるがゆえ、進行が早いという特徴があります。
初めは軽い物忘れ程度ですが、劇的なスピードで進行し、見当識(日付や時間、場所などを認識する機能)障害、判断力・理解力の低下、徘徊や妄想、幻覚など様々な認知症状が現れます。
発症年齢が若く、働き盛りの時期であり、一家の生計を支えている場合も多いです。
症状が進行して就労を継続できない状況になってしまうと、経済的に大きな負担となってしまいます。
若年性アルツハイマーの方が受けられる支援の1つに、障害年金があります。
障害年金制度は、いくつかの要件や満たすべき認定基準があり複雑です。
今回は若年性アルツハイマーで障害年金を申請する際のポイントを、社会保険労務士である私が解説していきます。
障害年金とは
障害年金とは原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった方が受給できる公的年金のことです。
障害年金を受給するために必要な要件は以下の3つです。
- 初診日(初めて医療機関を受診した日)が証明できる
- 年金保険料を一定期間納付している
- 障害等級に該当している
初診日が20歳前であれば、年金保険料を納付する義務がないため例外です。
上記要件を満たすことができれば、初診日から1年6ヶ月を過ぎた日が「障害認定日」となり、その翌月から障害年金が受給できます。
若年性アルツハイマーにおける支給金額について
障害年金の支給金額は、初診日時点で加入している年金制度で変わります。
初診日時点で国民年金に加入していれば「障害基礎年金」、厚生年金あるいは共済年金に加入していれば「障害厚生年金」が受給できます。
障害の程度によって等級が決められ、支給額も変わります。
障害基礎年金
障害基礎年金の1カ月の平均支給額は約7万円です。
障害基礎年金の場合は1級と2級があります。
子どもがいる場合、一定の条件を満たしていれば、加算額があります。
障害厚生年金
障害厚生年金の1カ月の平均支給額は約10万円です。
障害厚生年金の等級は1~3級・障害手当金の4段階あります。
厚生年金に加入している方は、同時に国民年金にも加入しています。
よって障害厚生年金対象の方は、1級と2級においては障害基礎年金分も加えて受給可能です。
配偶者がいる場合、一定の条件を満たしていれば配偶者加算があります。
若年性アルツハイマーは子どもの教育費や住宅ローンなど、人生で一番お金がかかる時期での発症となり、経済的問題が大きいです。
現在就労している、もしくは休職中の方で、まだ初診を済ませていない場合は障害厚生年金を受給できるよう、早めに医療機関を受診しましょう。
若年性アルツハイマーにおける障害年金の認定基準
認定基準を満たしているかどうかは、「単身生活を想定した上で、日常生活動作においてどの程度の援助が必要か」で判断します。
具体的な項目としては以下の通りです。
- 適切な食事
- 清潔保持
- 金銭管理を含めた買い物
- 通院や服薬
- 他者との対人関係
- 安全保持や危機対応(通常と異なる事態になった時に対応がとれるか等)
- 社会性(公共施設などでの手続き等を1人で行えるか等)
以上の項目で、常時援助が必要な状態であれば、1級。
部分的な援助が必要であれば、その程度によって2級となります。
3級は障害厚生年金の方のみ対象ですが「労働にどの程度の制限をうけているか」についても考慮されます。
障害年金を申請する際のポイント
申請にあたり、一番重要な書類は「医師の診断書」です。
主治医に普段の日常生活での、できない部分を伝えていますか?
医師に診断書作成を依頼する際は、受給に繋がるポイントをありのまま伝えていく必要があります。
医師には「辛い」「大変」と伝えるよりも「症状により日常生活動作の、この部分に支障が出ている」と具体的に伝えましょう。
主治医が忙しく、診察中に全て伝えるのが難しいということであれば、わかりやすく紙に書いておき、渡せるように準備しておくのも良いでしょう。
診断書を受け取ったら、実際の状態と相違がないかを確認しましょう。
もう一つ大切な書類として病歴・就労状況申立書があります。
病歴・就労状況申立書は若年性アルツハイマーを発症してから現在に至るまでの経過について、ご本人・ご家族が記載する書類です。
診断書の内容とズレがないよう確認しながら、日常生活、就労において支障が出ている部分をより丁寧に、詳しく記載しましょう。
まとめ
今回は若年性アルツハイマーにおける障害年金の申請について解説してきました。
若年性アルツハイマーは現状、治療で進行を遅らせることはできても、根治は難しい状況です。
初めは物忘れ程度でも、だんだんと進行して就労を継続することが難しくなり、退職勧告を受けてしまうケースもあります。
人生においてまだまだお金がかかる時期での障害であるため、受けられる支援は最大限活用しましょう。
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