【社労士が解説】障害年金の対象となる精神障害とは?手続方法とは?

精神の障害をお持ちの方は、障害年金を受給できる場合があります。

障害年金は、病気やけがによって生活や仕事などに支障がある場合に受け取れる年金です。

 

もくじ

  • ①認定基準
  • ②対象となる6つの精神疾患
  • ③障害の例
  • ④障害年金を請求する手続き

 

①認定基準

障害年金の申請には、障害の状態が年金が支給される程度に該当するかどうかの確認が必要です。

具体的な認定基準は次のとおりです。

障害の程度

 

障害の状態

1級

日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度 のもの

2級

日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えること を必要とする程度のもの

3級

労働が著しい制限を受けるか又は労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの、及び労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

障害手当金

労働が制限を受けるか又は労 働に制限を加えることを必要とする程度の障害を残すもの

 

障害による機能低下を重視する障害者手帳制度とは異なり、障害年金は日常生活の制限が重視されるので、両者の違いに気をつけましょう。

 

②対象となる6種類の疾患

障害年金の対象となる疾患の6種類は、次のように区分されています。

1. 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害
2. 気分(感情)障害
3. 症状性を含む器質性精神障害
4. てんかん
5. 知的障害
6. 発達障害

参考:国民年金・厚生年金保険 障害認定基準|日本年金機構
区分ごとに、障害の程度を確認する必要があります。

③各区分における障害の例

6種類の認定基準は、年金事務所が公表する国民年金・厚生年金保険 障害認定基準で示されているので目安にしましょう。障害年金の各等級等に相当すると認められるものを一部例示すると次のとおりです。

 

1.統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害

統合失調症や統合失調症型障害・妄想性障害について、障害程度ごとの状態例は次のとおりとされています。

障害の程度

障害の状態

1級

統合失調症によるものにあっては、高度の残遺状態又は高度の病状があるため高度の人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験が著明なため、常時の援助が必要なもの

2級

統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があるため人格変化、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があるため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

統合失調症によるものにあっては、残遺状態又は病状があり、人格変化の程度は著しくないが、思考障害、その他妄想・幻覚等の異常体験があり、労働が制限を受けるもの

なお、人格障害は原則として対象にならないので気をつけましょう。

 

2.気分(感情)障害

気分(感情)障害の障害程度ごとの状態例は、次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1級

気分(感情)障害によるものにあっては、高度の気分、意欲・行動の障害及び高度の思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり、ひんぱんに繰り返したりするため、常時の援助が必要なもの

2級

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、かつ、これが持続したり又はひんぱんに繰り返したりするため、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

気分(感情)障害によるものにあっては、気分、意欲・行動の障害及び思考障害の病相期があり、その病状は著しくないが、これが持続したり又は繰り返し、労働が制限を受けるもの

 

3.症状性を含む器質性精神障害

症状性を含む器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)とは、先天異常や頭部外傷、変性疾患、新生物、中枢神経等の器質障害を原因として生じる精神障害に、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患による中枢神経障害等を原因として生じる症状性の精神障害を含むものとされています。

このほか、アルコールや薬物等の精神作用物質の使用による精神及び行動の障害についても含みます。障害程度ごとの状態例は次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1級

高度の認知障害、高度の人格変化、その他の高度の精神神経症状が著明 なため、常時の援助が必要なもの

2級

認知障害、人格変化、その他の精神神経症状が著明なため、日常生活が 著しい制限を受けるもの

3級

1 認知障害、人格変化は著しくないが、その他の精神神経症状があり、労働が制限を受けるもの

2 認知障害のため、労働が著しい制限を受けるもの

障害手当金

認知障害のため、労働が制限を受けるもの

 

4.てんかん

てんかん発作は、部分発作や全般発作、未分類てんかん発作などに分類されます。

発作の分類は、次のとおりです。

 

 A:意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

 B:意識障害の有無を問わず、転倒する発作

 C:意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作

 D:意識障害はないが、随意運動が失われる発作

 

これを踏まえ、障害程度ごとの状態例は次のとおりとされています。

障害の程度

障害の状態

1級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの

2級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しい制限を受けるもの

3級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの

 

5.知的障害

知的障害とは、知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)にあらわれ、日常生活に持続的な支障が生じているため、何らかの特別な援助を必要とする状態にあるものをいいます。

障害程度ごとの状態例は次のとおりです。

障害の程度

障害の状態

1級

知的障害があり、食事や身のまわりのことを行うのに全面的な援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が不可能か著しく困難であるため、日常生活が困難で常時援助を必要とするもの

2級

知的障害があり、食事や身のまわりのことなどの基本的な行為を行うのに援助が必要であって、かつ、会話による意思の疎通が簡単なものに限られるため、日常生活にあたって援助が必要なもの

3級

知的障害があり、労働が著しい制限を受けるもの

 

6.発達障害

発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これらに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現するものとされています。

障害程度ごとの状態例は次のとおりです。

障害の程度

 

障害の状態

1級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ、著しく不適応な行動がみられるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とするもの

2級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ、不適応な行動がみられるため、日常生活への適応にあたって援助が必要なもの

3級

発達障害があり、社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ、社会行動に問題がみられるため、労働が著しい制限を受けるもの

 

④障害年金を請求するための手続きの流れ

ここからは、障害年金を請求するための流れを紹介します。

 

  1. 年金事務所へ事前に相談
  2. 納期記録の確認
  3. 必要書類の受け取り
  4. 医師に診断書を依頼
  5. 病歴・就労状況等申立書
  6. 裁定請求書の提出

 

1.年金事務所へ事前に相談

まずはお近くの年金事務所に電話しましょう。さらに必要があれば、直接出向いて制度の説明を受けます。

お近くの年金事務所がどこかは、年金事務所のホームページから検索可能です。

全国の相談・手続き窓口|日本年金機構

 

2.納期記録の確認

障害年金を受給するには、納付記録の確認が不可欠です。

受給に必要な納付要件は次のとおりとなっています。

  • 国民年金の保険料納付済期間と保険料免除期間をあわせて納付した期間が3分の2以上あること、
  • 初診日が令和8年4月1日前で初診日において65歳未満であれば、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと
  • 20歳前で年金制度に加入していない場合は、納付の確認は必要ありません

障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

 

3.必要書類の受け取り

納付記録を確認して問題がなければ、申請に必要な書類を受け取りましょう。障害年金を請求するために必要な書類は次の4種類です。

  1. 診断書
  2. 病歴・就労状況等申立書
  3. 受診状況等証明書(必要な場合)
  4. 障害年金裁定請求書

4.医師に診断書を依頼

認定基準を確認して障害年金に該当しそうであれば、受診している医療機関に診断書の作成を依頼します。医療機関の窓口で、診断書の作成を依頼しましょう。診断書の作成には数週間かかる場合があります。なお、初診が現在かかっている医療機関と異なる場合には、初診時の医療機関等で受診状況等証明書が必要となるので注意が必要です。

 

5.病歴・就労状況等申立書

診断書を受け取ったら、病歴・就労状況等申立書を作成します。発病から初診日までの経緯や現在の受診状況・就労状況について記入が必要です。

これは障害の状態を判断するために必要な事項を確認するために必要な書類となります。

例えば、生来性の知的障害を原因として請求する際などは、出生から現在までの状況の記載が必要とされる場合があります。

提出後に不備があれば年金事務所から補記を求められるので、記入にあたっては次のガイドラインを参考にして詳しく記載してください。

『国民年金・厚生年金保険 精神の障害に係る等級判定ガイドライン』等

 

6.裁定請求書の提出

必要書類がそろったら、障害基礎(厚生)年金などの裁定請求書に氏名住所・年金を受ける口座情報など必要事項を記載して提出します。障害基礎年金の場合は市区町村役場に、障害厚生年金の場合は年金事務所に提出が必要です。

審査の結果がわかるまでに3ヶ月程度を見ておきましょう。

なお、裁定請求をしたからといって、必ず年金が支給されるわけではないので注意しましょう。

 

 

⑤障害年金の申請を進める上で

障害年金の申請を進める上で診断書の依頼は大きなポイントになります。

不安がある方は是非当事務所の無料相談を活用ください。

 

執筆者紹介

下斗米 貴彦
下斗米 貴彦
社会保険労務士 下斗米 貴彦(しもとまい たかひこ)

宮城県仙台市を中心に全国で障害年金申請をサポートしている。累計相談実績約600件(2024年6月現在)