【社労士が解説】障害年金の遡及(遡り)請求とは?社会保険労務士が解説いたします。

こんにちは、社会保険労務士の下斗米です。

障害年金についてインターネットなどで調べていると「○百万円の障害年金をもらった!」などの情報を見つけることがあると思います。それはおそらく障害年金の遡及請求によるものだと思います。

「遡及請求」は注意点もございますので、解説致します。

もくじ
  • ①障害年金とは
  • ②遡及請求とは
  • ③遡及期間は5年は正しくない?
  • ④遡及請求の落とし穴とは?
  • ⑤遡及請求できる場合とは?
  • ⑥遡及請求ができない場合。事後重症請求とは?

 

①障害年金とは?

 

障害年金は、病気やけがによって今までのような時間で仕事が出来なくなった、日常生活上どうしても人の助けが必要になった場合などに受け取ることができる年金です。

障害年金には「障害基礎年金」「障害厚生年金」の2種類があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」を請求することができます。

 

※障害厚生年金に該当する状態よりも軽い障害が残ったときは、障害手当金(一時金)を受け取ることができる制度もあります。

②遡及請求とは?

 

「遡及請求」と文字通り障害年金を遡って請求(受給)することを指します。

何年間も遡って障害年金を受給しますので結果的に○百万円になる場合もあります。

遡及請求を行うにあたってはいわゆる通常の障害年金請求(認定日請求)より準備する書類も増えるので請求の難易度は上がります。

 

参考:認定日請求とは?

障害認定日に「ある一定の障害の状態」にあるときは、障害認定日の翌月分から年金を受給できます。

この障害認定日に障害年金を請求する方法を認定日による請求といいます。

障害認定日とは?

障害年金申請において「障害がどのような状態にあるか?を定める日」のことです。

原則、その障害の原因となった病気やけがについての初診日から1年6カ月を過ぎた日です。

※1年6カ月以内にその病気やけがが治った場合(症状が固定した場合)はその日を指します

初診日とは?

その病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。

同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります。

③遡及期間5年は正しくない?

 

「遡及請求」とはわかりやすく使っている言葉であり正式な名称ではありません。

正確には「認定日請求」となり、「認定日請求」をさかのぼって(遡及して)行うのでわかりやすく「遡及請求」と呼びます。

イメージとしては「認定日請求の中の1つの請求方法」になります。

この遡及請求について「現時点から5年間遡って障害年金を請求できる。」と思っている方が多いのですがこちらの認識は誤りになります。

10年前に障害認定日のある障害について遡及請求した場合、遡及請求も認定日請求と同じで、あくまで「障害認定日の翌月分からの年金請求」となり、仮に受給が決定した場合、決定は10年前からとなりますが時効があるために遡って受け取ることのできる年金は5年分が限度ということになります。

年金の時効とは?

年金を受ける権利(基本権)は、権利が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅します(国民年金法第102条第1項・厚生年金保険法第92条第1項)。

 

④遡及請求の落とし穴とは?

遡及請求はあくまで「認定日請求」になりますので、「障害認定日」に障害の状態がどのような状態にあったか(障害年金に該当する状態にあったか)?を確認する必要があります。

もちろん診断書で確認することとなります。

「障害認定日」に障害の状態を診断書で確認できなければ遡及請求ができません。

認定日が昔のためカルテが破棄されている・病院が廃院しているという場合は注意が必要です。

⑤遡及請求ができる場合とは?

遡及請求ができる場合・できないケースを例で説明します。

例1.Aさん(遡及請求ができる)

・障害認定日から10年が経過している。
障害認定日時点で1級相当の障害状態にあった。
現時点でも1級相当の障害状態にある。
障害認定日時点での診断書を持っている。

この場合は障害認定日時点(10年前)から障害年金の受給権が発生することとなりますが、時効のため遡って受け取ることのできる年金は5年分となります。

例2.Bさん(遡及請求できない)

・障害認定日から10年が経過している。
障害認定日時点では障害年金に該当する障害の状態になかった。
・5年前から1級相当の障害状態にあった。
・現時点でも1級相当の障害状態にある。
・障害認定日時点での診断書を持っている。

この場合は障害認定日時点(10年前)では障害年金に該当する障害の状態になかったため遡及請求することはできません。

 

例3.Cさん(遡及請求できない)

・障害認定日から10年が経過している。
・障害認定日時点で1級相当の障害状態にあった。
・現時点でも1級相当の障害状態にある。
障害認定日時点での診断書を取得できない。

この場合は障害認定日時点(10年前)で障害年金に該当する障害の状態(1級相当の障害状態)にあることを客観的に証明することができないため遡及請求することはできません。

ただしこの場合は事後重症請求をできる可能性があります。

⑥遡及請求ができない場合。事後重症請求とは?

障害認定日にある一定の障害の状態に該当しなかった場合でも、その後症状が悪化し、ある一定の障害の状態になったときには請求日の翌月から障害年金を受給できます。

この障害年金を請求する方法を事後重症による請求といいます。

ただし、請求書は65歳の誕生日の前々日までに提出する必要があります。

なお、請求した日の翌月分から受け取りとなるため、請求が遅くなると年金の受給開始時期が遅くなります。

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執筆者紹介

下斗米 貴彦
下斗米 貴彦
社会保険労務士 下斗米 貴彦(しもとまい たかひこ)

宮城県仙台市を中心に全国で障害年金申請をサポートしている。累計相談実績約600件(2024年6月現在)