【社労士が解説】糖尿病は障害年金3級|申請時のポイントを解説します

【障害年金 ご相談事例】40歳代男性 脳内出血による感覚障害を患っている40歳代男性からご相談を受けました

こんにちは、社会保険労務士の下斗米です。

糖尿病にてインスリン治療中で、血糖コントロールが困難な状態である場合、障害年金3級に認定される可能性があります。

この記事では、糖尿病で障害年金を申請する際のポイントについて、障害年金のプロである社会保険労務士がわかりやすく解説します。

今は認定基準に該当しない糖尿病の方も、初診日証明をしておくのが得策です。
この点についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

合併症のない糖尿病で障害年金3級となる障害認定基準

平成28年6月1日から「代謝疾患(糖尿病)による障害」の認定基準が一部、改正されました。

(参考:日本年金機構『平成28年6月1日から「代謝疾患(糖尿病)による障害」の認定基準を一部改正します』)

これにより、合併症のない糖尿病でも、3級に該当する可能性があります。

合併症のない糖尿病においては「検査日より前に、90日以上継続して必要なインスリン治療を行っていると確認できた方」という前提条件があります。

さらに、以下2つの条件を両方、満たす必要があります。

1. Cペプチド値、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、 高血糖高浸透圧症候群のいずれかが一定の程度を超える
2. 日常生活への支障が基準を超える

これらを満たすことで「血糖コントロール困難」と判断されるわけです。

詳細

以下、詳しく解説します。

「Cペプチド値、重症低血糖、糖尿病ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群のいずれかが、一定の程度を超える」状態とは
上記の条件に該当するためには、以下のうち、いずれか1つに該当している必要があります。

 自身のインスリン分泌がとても不足している状態で、空腹時または随時の血清Cペプチド値が0.3ng/mL未満
 重症低血糖の所見が平均して月1回以上ある
 インスリン治療中に、糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある

 

「日常生活への支障が基準を超える」状態とは

一般状態区分表の「イ」または「ウ」に該当する必要があります。
一般状態区分表とは、日常生活や労働生活にどの程度の支障があるかを客観的に判断するための基準表です。

【一般状態区分表「イ」の状態】
糖尿病による軽い症状があり、身体を動かすことに制限はあるものの、歩行、軽い家事や座って行う事務作業などはできる。

【一般状態区分表「ウ」の状態】
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要である。軽い家事などもできない。日中の50%以上は身体を起こした状態でいられる。

 

3級があるのは障害厚生年金のみ

障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金の2種類あります。
なかでも、3級があるのは障害厚生年金のみです。
したがって、3級に該当するためには「初診日時点で厚生年金保険の被保険者」である必要があります。

初診日が20歳前にある場合や、初診日時点で国民年金保険の被保険者である場合、障害基礎年金に該当します。
この場合は、2級以上でなければ障害年金を受給できません。

1型糖尿病では発症年齢が20歳前という方もいるでしょう。
したがって、初診日を最初に調べる必要があります。

 

さらに上位等級となる可能性がある

上記で解説した基準よりも、明らかに状態が悪い場合や、日常生活で他者の援助が必要不可欠といった場合は、2級以上に該当する可能性があります。

「自分はもっと重症かもしれない」と感じた方は、主治医に確認したり、障害年金に詳しい社会保険労務士に相談したりすると良いでしょう。

 

合併症のある糖尿病での障害認定基準

糖尿病にはさまざまな合併症があります。
糖尿病性腎症により人工透析を行っている場合は、原則2級に該当します。

合併症別の障害認定基準は以下を参考にしましょう。

 糖尿病性網膜症:眼の障害
 糖尿病性腎症:腎疾患による障害
 糖尿病性神経障害:神経系統の障害
 閉塞性動脈硬化症:肢体の障害

 

初診日の特定に合併症との相当因果関係が重要

合併症においては、糖尿病との間に「相当因果関係があるか」が、非常に重要です。
相当因果関係がある状態とは「前の疾病がなかったら、後の疾病は起こらなかったであろう」と認められることを指します。

相当因果関係は、医学的な考え方と、障害年金の認定基準が異なる場合があり、注意が必要です。
以下を参考にしてください。

【相当因果関係ありと判断される合併症】
 糖尿病性網膜症
 糖尿病性腎症
 糖尿病性神経障害
 糖尿病動脈閉鎖症

【相当因果関係なしと判断される合併症】
 脳出血
 脳梗塞

相当因果関係があるか否かで、初診日が変わるでしょう。

そのため、受給できるかどうか、かつ受給額にも大きな差がでますので、判断に迷ったら社会保険労務士に相談することをおすすめします。

 

該当していなくても初診日は特定しておきましょう

障害年金は初診日が証明できなければ受給できません。

そして、糖尿病はゆっくりと悪化していく特徴があります。
これは、今障害認定基準に該当していなくても、将来該当する可能性があるということを意味します。

その頃に初めて初診日を特定しようとしても、初診の医療機関が閉院していたり、カルテが破棄されていたりすることは往々にしてあるのです。

したがって、将来の自分のために、今できる準備をしましょう。

 

まとめ:糖尿病での申請は障害年金のプロに相談しましょう

糖尿病で障害年金を申請する際は、初診日の特定だけでも大変な作業です。

しかし、他にも医師の診断書や、病歴・就労状況等申立書など、重要な書類を揃える必要があります。
1つのミスで、不支給となることは多々あります。

また、1度不支給になると2度目の申請は、さらにハードルが上がってしまうのです。

安心して申請するために、障害年金のプロである社会保険労務士に相談し、確実な受給へとつなげましょう。

 

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⑥加入年金制度の種類と加入状況、⑦傷病名(診断傷病名)

執筆者紹介

下斗米 貴彦
下斗米 貴彦
社会保険労務士 下斗米 貴彦(しもとまい たかひこ)

宮城県仙台市を中心に全国で障害年金申請をサポートしている。累計相談実績約600件(2024年6月現在)