【社労士が解説】障害者が保険加入を検討する前に知っておきたい制度
目次
はじめに
障害を持つ子どもの親にとって、親亡き後の子どもの経済面が心配で、保険を検討される方も多いのではないでしょうか。
障害者が新たに保険に加入するのはなかなか難しく、選択肢が少ないというのが現状です。
今回は、生命保険加入を検討する前に、知っておくべき制度について社会保険労務士である私が解説します。
ぜひ参考にしてください。
障害者が入れる保険は選択肢が少ない
生命保険は、加入時点での健康状態や職業などから「保険金が発生する確率」を考慮し審査します。
よって、持病を持っていたり、高齢だったりも同様ですが、障害者の場合も、入れる保険の選択肢は少なくなります。
とはいえ、入れる保険がゼロというわけではありません。
しかし、保険は掛け金が発生するものですので、障害者の場合、まずは受けられる支援を最大限活用することが大切です。
すると、出ていくお金を減らし、入ってくるお金を増やすことに繋がります。
そのうえで、必要な場合は保険を検討する、という流れにしましょう。
障害者が保険加入を検討する前に知っておきたい制度
障害者の経済的負担を軽減するという目的で利用できる制度はいくつかあります。
- 障害者手帳
- 自立支援医療
- 高額療養制度
- 障害年金
- 特別障害者手当
- 労働者災害補償保険(労災保険)
- 傷病手当金
- 生活保護
- 障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
今回は「親亡き後の子どもの将来のために」というポイントに絞り、保険加入を検討する前に知っておきたい以下の制度3つについて解説します。
- 障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
- 障害年金
- 生活保護
障害者扶養共済制度(しょうがい共済)
保護者が健康なうちに毎月一定額の掛け金を支払うことで、保護者が死亡後(または重度障害)、障害のある方へ終身年金が支給されるというもの。
都道府県・指定都市が実施する任意加入の公的制度です。
年金額は1口あたり毎月2万円で、1人2口まで加入できます。
以下のようなメリットがあります。
- 民間の生命保険より掛け金が安い
- 掛け金全額が所得控除となり、所得税・住民税の軽減となる
- 年金を受け取る際も所得税・住民税・相続税・贈与税はかからない
- 生活保護の収入認定とはならない
掛け金を支払う保護者の加入条件は以下のとおりです。
- 一定の障害のある方を扶養している
- 65歳未満
- 健康であること
- 加入できる保護者は、障害者1人に対して1人
通常の生命保険では、生活保護になった場合、その時点で原則として保険の解約を求められ、解約金や返戻金などは収入認定され受給額が減額します。
しかし、障害者扶養共済制度の年金は収入として認定されないため、生活保護費にプラスして受給できます。
万が一に備えて、障害を持つ子どもの将来の収入を増やせるのは大きなメリットでしょう。
障害年金
障害を持った方が一定要件を満たせば受給できる公的年金です。
要件は以下のとおりです。
- 原則20歳から64歳までの方
- 年金保険料を一定期間納付している
- 障害等級に該当している
申請する障害で、初めて医療機関を受診した日(初診日)に加入している年金制度によって受給額が異なります。
【国民年金の場合】
障害基礎年金となり、1ヶ月の受給額は平均7万円。
初診日が20歳前の場合も障害基礎年金に該当します。
【厚生年金の場合】
障害基礎年金+障害厚生年金が受給でき、1ヶ月の受給額は平均10万円。
障害等級が1~3級と段階があり、障害の程度や日常生活への影響度合いなどで判断されます。
原則として就労により収入があるからといって減額・不支給となることはありません。
生活保護
生活に困窮する方の生活を保障する制度です。
居住地にもよりますが、単身者で月平均10~13万円。
障害者だけに加算される障害者加算があります。
障害者加算は障害の程度と居住地によって変わり、約月1万4千円~2万6千円が生活保護費に追加されます。
全額が税金でまかなわれているため、収入によって減額・不支給となったり、預貯金ができなかったりと、さまざまな制約があるのが特徴です。
障害年金は要件を満たせば20歳から受給可能です
障害年金は年金という名前から「高齢になってから受け取るもの」と誤解されている方もいます。
しかし、障害年金が受給できる対象年齢は20歳からです。
現在20歳前という方でも、申請から決定までには時間を要しますので、受給額が最大となるよう事前に準備しておくことが大切です。
とはいえ、障害年金制度は「受給できる金額が大きいゆえに複雑」という特徴があります。
申請方法のポイントを理解していないと、受給できる状態にも関わらず不支給となってしまったケースが往々にあります。
また、1回目の審査で不服な結果となった場合、不服申立てや審査請求ができますが、1回目よりもハードルが上がります。
確実に受給できるか心配な方は、障害年金のプロである社会保険労務士に相談するのがおすすめです。
まずは支援を検討し、足りない部分を保険で補いましょう
まずはベースとして活用できる支援を最大限活用し、足りない部分を保険で補うようにするのがおすすめです。
支援は、該当していても自分で申請しなければ受け取れません。
特に障害年金は制度が複雑であることから、窓口や医師から「障害年金の対象ではありません」と言われてしまうケースもあります。
それでも、ポイントをおさえて申請したら受給できた、という場合もあるのです。
障害年金は該当していれば、生活への大きな助けとなります。
20歳から受給可能ですので、ぜひ活用してください。
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