【社労士が解説】ADHD(注意欠陥多動性障害)で障害年金を申請する際のポイント
目次
ADHD(注意欠陥多動性障害)は一定の条件を満たせば障害年金を受給できます。
今回ADHDで障害年金を申請する際のポイントを、社会保険労務士である私が解説していきます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)とは
ADHDは発達障害の一種です。
集中力がない、落ち着きがない、感情がコントロールできない、などの症状があります。
原因は明らかになっていませんが、行動をコントロールしている脳の機能障害が原因のひとつであると考えられています。
以前は子ども特有のものとされていましたが、大人になっても50%以上の人はADHDの症状が残っていることが明らかになってきたようです。
根治治療はありませんが、必要に応じて薬物療法や心理療法が行われます。
ADHDという病名は近年ようやく人々に知られるようになりました。
しかし未だ理解されず、人間関係に困難を抱えている人が多いです。
ストレスからうつ病等を併発するケースもよくあります。
障害年金とは
障害年金とは原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった方が受給できる公的年金のことです。
障害者手帳とは違う制度であり、基準も異なります。
障害年金の種類について
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類あります。
障害基礎年金
初診日時点で国民年金に加入、もしくは初診日が20歳前の場合は「障害基礎年金」に該当します。
障害等級は1級と2級のみです。
障害厚生年金
初診日時点で厚生年金・共済年金に加入していれば「障害厚生年金」に該当します。
障害等級は1~3級です。
厚生年金に加入しているということは国民年金にも加入しているため、1級と2級に関しては障害基礎年金と障害厚生年金の両方が受給できます。
障害年金を受給するための3つの要件
障害年金を受給するためには、満たすべき3つの要件があります。
1. 初診日(ADHDで初めて医療機関を受診した日)を証明できる
ADHDは発達障害ですが、出生日が初診日とはならず、ADHDの症状で初めて医療機関を受診した日が初診日となります。
2. 初診日の時点で、国民年金もしくは厚生年金・共済年金を納めていること
年金保険料の未納がなければ、基本的にこの要件は満たしています。
免除期間は未納とはなりません。
初診日が20歳前の場合は年金保険料を納める義務がないため例外です。
3. 障害等級に該当していること
日本年金機構が示す、障害認定基準に該当している必要があります。
ADHD(注意欠陥多動性障害)の障害認定基準
ADHDを含む発達障害については、たとえ知能指数(IQ)が高くても、社会性やコミュニケーション能力と「日常生活にどの程度の支障があるか」に着目して認定されます。
具体的な日常生活動作の項目としては以下の通りです。
- 適切な食事(配膳などの準備も含む)
- 清潔保持
- 金銭管理と買い物
- 通院や服薬
- 他者との対人関係
- 安全保持や危機対応(通常と異なる事態になった時に対応がとれるか等)
- 社会性(公共施設などでの手続き等を1人で行えるか等)
以上の項目が「他者の援助なしで」どの程度できるかどうかが、基準となります。
常に援助が必要な状態であれば1級。
部分的な援助が必要であれば、その程度によって2級となります。
3級は初診日の時点で厚生年金・共済年金に加入していた方のみ対象ですが「労働にどの程度の制限をうけているか」についても考慮されます。
よって就労しているからといって非該当になるわけではありません。
他の精神障害を併発している場合は、それらも含めて総合的に認定されます。
ADHD(注意欠陥多動性障害)で障害年金を申請する際のポイント
障害年金は書類のみで審査が行われます。
ADHDで障害年金を申請する際に一番重要となる書類は「医師の診断書」です。
診断書は医師が記載するため、「日常生活における支障がでている部分」を明確に医師に伝える必要があります。
日常生活や職場において、他者の援助や配慮を受けている部分を全て、具体的に伝えるようにしましょう。
そしてその内容がしっかりと診断書に反映されているか確認することも大切です。
次に重要な書類として、ご本人やご家族が記載する「病歴・就労状況等申立書」があります。
病歴・就労状況等申立書は幼少期から現在に至るまでのADHDの経過を記載する書類です。
診断書をみながら、内容を補足するような形で記載しましょう。
具体的なエピソードを交えて記載すると伝わりやすいです。
医師の診断書と病歴・就労状況等申立書が、整合性のとれた内容になっているか確認した上で申請してください。
初診日証明について
ADHDは幼少期に初診日がある場合も多いでしょう。
カルテの保管期間は基本的に5年なので、カルテが破棄されていたり、医療機関自体が閉院していたりして、受診状況等証明書を記載してもらうことが難しい場合もあるでしょう。
しかし母子手帳や診察券、お薬手帳、障害者手帳申請の際の診断書、領収書、第三者証明など、いろいろな資料を基に初診日の証明が可能になる場合があります。
あきらめず、初診日証明の手がかりとなるものを探しましょう。
まとめ
障害年金の申請は複雑で、大変な作業です。
ADHDは幼少期からの長い経過を遡って書類を準備しなければならず、よくわからないからと諦める方もいます。
しかし障害年金を受給できるようになると生活への負担が軽減できるかもしれません。
ぜひ前向きに申請を検討してみてください。
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