【社労士が解説】悪性高血圧症・高血圧症で障害年金を申請する際のポイントについて解説します
目次
悪性高血圧症は条件を満たせば、障害年金の1級に認定されます。
単に高血圧症のみでは障害年金の対象とはなりませんが、高血圧はさまざまな疾患の引き金となります。
今回は悪性高血圧症・高血圧症で障害年金を申請する際のポイントを解説していきます。
悪性高血圧症とは
悪性高血圧症とは、上の血圧が180mmHg、下の血圧が120mmHg以上のものをいい、高血圧緊急症ともいいます。
単に血圧が異常に高いだけではなく、脳、心臓、腎臓、大動脈などに障害が起こり進行するため、すぐに治療をしなければ命に関わる状態です。
すぐに入院となり、降圧治療が行われます。
高血圧症とは
高血圧症とは降圧薬を内服していない状態で繰り返し測定しても、上の血圧が140mmHg以上、下の血圧が90mmHg 以上の場合に診断されます。
高血圧の状態が長く続くと、動脈硬化という状態になります。
動脈硬化は脳出血や脳梗塞、大動脈瘤、腎硬化症、心筋梗塞、眼底出血などを引き起こす原因となります。
障害年金とは
障害年金とは原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった方が受給できる公的年金のことです。
障害年金を受給するための基本的な要件
障害年金を受給するためには、前提として以下2つの要件を満たす必要があります。
1.初診日を証明できる
初診日とは、悪性高血圧症・高血圧症で「初めて医療機関を受診した日」です。
2.初診日時点で、国民年金もしくは厚生年金・共済年金の保険料を納めている
年金保険料の未納がなければ、基本的にこの要件は満たしています。
免除期間は未納とはなりません。
初診日時点で国民年金に加入していれば「障害基礎年金」、厚生年金・共済年金に加入してれば「障害厚生年金」となります。
各障害年金における障害等級について
障害基礎年金では障害等級は1級と2級があり、障害厚生年金では1~3級まであります。
初診日時点で厚生年金・共済年金に加入していた方は、1級と2級では障害基礎年金と障害厚生年金の両方を受給できます。
悪性高血圧症の障害認定基準
悪性高血圧症は障害等級1級となります。
障害年金における悪性高血圧症の基準は以下の通りです。
- 下の血圧が120mmHg以上
- 眼底所見で、Keith‐Wagener分類Ⅲ群以上のもの
- 腎機能障害が急激に進行し、放置すれば腎不全にいたる
- 全身症状の急激な悪化を示し、血圧、腎障害の増悪とともに、脳症状や心不全を多く伴う
高血圧症の障害認定基準
単に高血圧の状態だけでは、障害年金の対象とはなりません。
認定の対象となるのは、高血圧症によって他の障害や合併症が出現している場合です。
高血圧症による障害の程度は、自覚症状や他覚所見、眼底所見、合併症の有無などと、日常生活状況を踏まえて総合的に認定されます。
医学的所見における等級別基準は以下の通りです。
2級
1年以内の一過性脳虚血発作、動脈硬化の所見の他に出血、白斑を伴う高血圧性網膜症を有するもの。
3級
頭痛、めまい、耳鳴、手足のしびれ等の自覚症状があり、1年以上前に一過性脳虚血発作のあったもの、眼底に著明な動脈硬化の所見を認めるもの。
または、大動脈解離や大動脈瘤を合併したもの。
上記に加えて、日常生活状況・就労状況によっては、さらに上位等級に認定される場合もあります。
合併症の基準について
高血圧症は悪化すると脳や心臓、腎臓などの合併症が起こりやすいです。
それぞれの合併症における障害認定基準は異なります。
脳の障害を合併した場合は「精神の障害」および「神経系統の障害」、心疾患を合併した場合は「心疾患による障害」、腎疾患を合併した場合は「腎疾患による障害」の認定要領により認定されます。
脳出血・脳梗塞では初診日として認められない
障害年金制度においては、脳出血・脳梗塞と高血圧症は相当因果関係が「ない」とされています。
よって脳出血・脳梗塞で障害年金を申請する際は、病院で高血圧症が原因と言われたとしても、高血圧症で初めて受診した日を初診日にはできませんので注意しましょう。
悪性高血圧症・高血圧で障害年金を申請する際のポイント
障害年金は書類のみで審査が行われます。
障害年金を申請する際にポイントとなる書類は以下の通りです。
医療機関で記載してもらう書類
- 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)・・・初診の医療機関と診断書作成を依頼する医療機関が同じ場合は不要。
- 医師の診断書
ご本人やご家族が記載する書類
- 病歴・就労状況等申立書(発症してから現在までの経過を記載する書類)
悪性高血圧症では基準を満たしていれば1級は確定となります。
高血圧症の場合は「日常生活でどの程度支障がでているか」を具体的に伝えることにより、上位等級となる可能性があります。
医師にも具体的に伝えるようにし、病歴・就労状況等申立書でも、診断書の内容を確認しながら「日常生活で支障がでている部分」をより詳しく記載するようにしましょう。
それぞれの書類が、整合性のとれた内容になっているか確認した上で申請してください。
まとめ
悪性高血圧症と診断された場合、初診日が証明でき、初診日時点で年金保険料をしっかりと納めていれば、障害年金1級は受給できます。
高血圧症の場合は基準を満たしていることに加え「日常生活における支障がでている部分」を具体的に伝えるようにしましょう。
障害年金制度は必要な書類も多く、複雑な制度ですが、受給できると生活への負担軽減に繋がります。
ぜひ、ご活用ください。
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