【社労士が解説】人工透析療法施行中で障害年金を申請したい方へ
人工透析療法施行中の方は条件がそろえば障害年金を申請することができます。
ただし、人工透析療法施行中の方で障害年金を申請していない人もいます。
人工透析療法施行中の方が障害年金を申請するときにどんな問題があるか、どうすれば申請できるかを徹底解説します。
人工透析とは?
腎臓の働きが10%以下になると、血液のろ過が十分できなくなります。
すると、尿から老廃物や水分が排泄されなくなり、尿毒症、水分が多すぎて心臓の病気に鳴る危険が高くなります。
本来、腎臓が行っていた血液中の老廃物や水分を除く治療を人工透析と言います。
人工透析には血液透析と腹膜透析の2種類の方法があります。
血液透析
人工腎臓フィルターを通して、血液から老廃物や水分を取り除く治療です。
通院して週に3回行います。
血管から血液を取り出して、人工腎臓フィルターに通すため、治療開始前に血管に手術が必要です。
腹膜透析
腹膜に透析液を入れて、体内で血液をきれいにします。睡眠中の時間で透析を行う方法や、日中に1〜4回ほど透析液を交換して行う方法があります。
自分で行うことができるので、通院は月に1回ほどです。
血液透析よりも時間的な拘束が少なく、社会活動が可能となります。
治療開始前に腹腔内に透析用の管を入れる手術を行います。
どちらも障害年金の申請が可能
人工透析には血液透析と腹膜透析がありますが、どちらも障害年金を申請することができます。
どちらの方法で透析を受けていても、透析を受けているなら障害年金の申請を検討しましょう。
障害年金を申請するための大切な2つの条件
「初診日に年金に加入している」
人工透析療法施行中の方で病院を受診した時に、国民年金か厚生年金のいずれかに加入している必要があります。
「受診状況等証明書」という書類があり、初診日がいつでどの病院を受診したかを証明しなければなりません。
「保険料を納付している」
初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合委員機関を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上である必要があります。
20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、この条件は不要となります。
これは簡単に言うと、国民年金の場合は保険料をしっかり納めていないと障害年金を申請できないということを意味しています。
「いずれの条件も満たしている必要がある」
「初診日に年金に加入している」、「保険料を納付している」という2つの条件は必ず満たしている必要があります。
例えば、人工透析で他の人からの多くのサポートが必要でも、この2つの条件を満たしていないと、障害年金は申請できません。
人工透析療法施行中の方が障害年金の問題になるのは「初診日」
人工透析療法施行中の方は、疲れやすくなった、足がむくむようになった、喉が渇くようになったといった症状から病院を受診されることがあります。
こうした症状で病院を受診する場合、食事に気をつける等の指導で治療の必要はないと判断されることがあります。
病状が進むことで腎臓を専門とする医師を受診して、人工透析を受けることになります。こうなると「初診日」とするのは疲れやすくなったなどの症状で受診した病院にするか、腎臓の専門医で受診した病院にするか迷う場合があります。
障害年金の申請で初診日というのは、診断名がつかなくても、治療をしなくても、人工透析の症状で病院に行った日のことを言います。それで、疲れやすい、足がむくむなどの症状が人工透析につながっている症状であれば、その症状で受診した日を初診日とします。
初診日が証明できないことがある
人工透析療法施行中の方は病歴が長く、初期症状で受診した病院に初診日を証明してもらおうとしてもカルテが破棄されていたり、病院自体がなくなっていたりする場合があります。障害年金の申請に必要な受診状況等証明書はカルテに基づいて作成される必要があるため、そのような状況では、受診状況等証明書を作成してもらうことはできません。
対処法を2つ紹介
カルテが破棄されていたり、病院がなくなっていたり、受診状況等証明書が作成できない場合でも、対処法が2つあります。
①第三者証明をしてもらう
人工透析につながる初期症状で病院に行ったことを家族や友人、同僚などに話していないでしょうか。もし話していて覚えているようであれば、「初診日に関する第三者からの申立書」で証明してもらうことで対処できます。
②病院受診を証明できる書類を探す
お薬手帳、診察券、病院の受診簿、病院の領収証、レセプト、紹介状などの書類が残っていないでしょうか。そうした書類から初診日に受診したことが証明できるケースがあります。
諦めない!
人工透析療法施行中の方が障害年金を申請するのを諦めてしまう原因の一つは、初診日を証明できないことです。どんな小さな情報でも、初診日につながる可能性があります。大切なのは、障害年金の申請を絶対に諦めないことがとても重要です。
初診日に関する調査票
人工透析療法施行中の方は、初診日に関する調査票の提出が必要になります。年金事務所で「アンケート」として依頼されることがあります。ただし、この書類は大切な書類なので、アンケートとして軽い気持ちで記入しないように注意する必要があります。
アンケートの内容
アンケートで答える内容は下記の通りです。
身体の不調・むくみ等を自覚されたのはいつごろですか?またその時はどのような状態でしたか?
健康診断等で尿に蛋白が出ていることを指摘されたことはありますか?
健康診断の結果ですぐに医療機関を受診しましたか?
アンケートの意図
アンケートの意図は、人工透析の初診日が本人の主張と正しいかどうか、別に初診日があるかどうかを判断するものです。
受診状況証明書などの書類と内容が違わないように書くようにしましょう。
障害年金の手続きの流れ
障害年金を申請するときは一般的に下記の流れを取ります。
1.初診日を確定する
2.保険料の納付要件を満たしているか確認する
3.受診状況等証明書を取得する
4.医師に診断書を作成してもらう
5.病歴・就労状況等申立書を作成する
6.申請に必要な書類(戸籍謄本や通帳のコピーなど)を揃える
7.年金事務所か市区町村役場(または役所)に提出する
等級判定ガイドライン
障害年金には等級があります。1級が重く3級は症状が軽い判定です。初診日に厚生年金に加入していた人のみ3級の判定がありますが、国民年金の場合は1,2級のみとなります。
等級 |
障害の状態 |
1級 |
病気により、日常生活が遅れないほど症状が重い状態。 |
2級 |
病気により、日常生活が著しく制限を受ける状態。 |
3級 |
病気により、労働が制限を受けるもの。 |
検査数値等を使った判断基準
具体的な検査数値等を使った判断基準は下記の通りです(カタカナのア〜オの一般状態区分表はそれぞれの級の認定基準の下にありますので、合わせてご覧ください)
1級の判断基準
検査成績が以下1つ以上に該当しかつ一般状態区分表のオに該当
・内因性クレアチニンクリアランスが10ml/分未満
・血清クレアチニンが8mg/dl以上
2級の認定基準
検査成績が以下1つ以上に該当かつ一般状態区分表のエ又はウに該当
・内因性クレアチニンクリアランスが20ml/分未満
・血清クレアチニンが5mg/dl以上
人工透析療法施行中のもの
3級の認定基準
検査成績が以下1つ以上に該当かつ一般状態区分表のウ又はイに該当
・内因性クレアチニンクリアランスが30ml/分未満
・血清クレアチニンが3mg/dl以上
【ネフローゼ症候群】
尿蛋白量(1日尿蛋白量又は尿蛋白/尿クレアチニン比)が3.5以上(g/日又はg/gCr)かつ以下いずれかに該当
・血清アルブミン(BCG法)が3.0g/dl以下
・血清総蛋白が6.0g/dl以下
かつ一般状態区分表のウ又はイに該当
一般状態区分表
区分 |
等級 |
一般状態 |
|
ア |
|
|
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同じように生活できる。 |
イ |
|
3級 |
軽い症状があり、肉体労働に制限があるが、歩くこと、軽い労働や座った作業ができる(軽い家事やジムなどの作業) |
ウ |
2級 |
歩くことや身の回りのことはできるが、少し介助が必要な時がある。軽い仕事はできないが、日中に50%以上は起きている。 |
|
エ |
|
身の回りのことはある程度できるが、しばしば介助が必要。日中の50%以上は寝ており、自分の力で外出がほぼ不可能な状態。 |
|
オ |
1級 |
身の回りのことができず、常に介助が必要。1日寝ていなければならない。活動範囲がベッド周辺に限られる状態。 |
人工透析療法施行中の方の障害年金を受給する判断基準は他にもあります。上記の情報は目安として参考にしてください。
お問い合わせください
障害年金の申請についてご不明な点などがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので、遠慮なくご連絡をいただければと思います。
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