【社労士が解説】てんかんで障害年金の申請について徹底解説します!

「てんかんで障害年金の受給は難しい…」と言われることがありますが、てんかんでも障害年金を申請することはできます。ただし、ポイントを押さえて申請することが大切です。今回は、てんかんで障害年金を申請するときのポイントを徹底解説します。

 

てんかんとは?

てんかんは脳の病気です。電気発射が脳全体に広がることで、全身のけいれん発作が起こります。脳全体が一気に興奮する発作では、体の一部や全体が一瞬動く発作や、体の力が抜けて倒れる脱力発作、ぼーっとする失神発作、全身のけいれん発作があります。

てんかんの原因は生まれつきのものから、病気が原因で発症するものがあります。また、事故などで大きな怪我をすることで発症するものもあります。発作によって意識を失うことは、社会生活において大きな影響となります。仕事や学校、事故に遭う危険など大きなハンディを背負うことになるでしょう。

 

障害年金を申請するための大切な2つの条件

障害年金を申請するためには大切な2つの条件があります。それぞれ見てみましょう。

初診日に年金に加入している

てんかんで病院を受診した時に、国民年金か厚生年金のいずれかに加入している必要があります。「受診状況等証明書」という書類があり、初診日がいつでどの病院を受診したかを証明しなければなりません。

保険料を納付している

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合委員機関を含む)と保険料免除期間を合わせた期間が3分の2以上である必要があります。20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、この条件は不要となります。

これは簡単に言うと、国民年金の場合は保険料をしっかり納めていないと障害年金を申請できないということを意味しています。

 

いずれの条件も満たしている必要がある

「初診日に年金に加入している」、「保険料を納付している」という2つの条件は必ず満たしている必要があります。例えば、てんかんで他の人からの多くのサポートが必要でも、この2つの条件を満たしていないと、障害年金は申請できません。

 

初診日の注意点

初診日は「てんかんと診断された日」ではありません。例えば、初めて発作が出て救急搬送されて、応急処置をされて帰宅したとしましょう。てんかんと診断されなくても、救急搬送されて治療したその日が初診日となります。病状が出て初めて病院に行った日が「初診日」なので間違えないようにしましょう。

 

障害年金の手続きの流れ

障害年金を申請するときは一般的に下記の流れを取ります。

1.初診日を確定する

2.保険料の納付要件を満たしているか確認する

3.受診状況等証明書を取得する

4.医師に診断書を作成してもらう

5.病歴・就労状況等申立書を作成する

6.申請に必要な書類(戸籍謄本や通帳のコピーなど)を揃える

7.年金事務所か市区町村役場(または役所)に提出する

 

等級判定ガイドライン

障害年金には等級があります。1級が重く3級は症状が軽い判定です。初診日に厚生年金に加入していた人のみ3級の判定がありますが、国民年金の場合は1,2級のみとなります。

 

てんかんの発作のタイプは4タイプあります。

A意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作

B意識障害の有無を問わず、転倒する発作

C意識を失い、好意が途絶するが倒れない発作

D意識障害はないが、随時運動が失われる発作

 

等級

障害の状態

1級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが月に1回以上あり、かつ、常時の援助が必要なもの。

2級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回以上、もしくは、C又はDが月に1回以上あり、かつ、日常生活が著しく制限を受けるもの。

3級

十分な治療にかかわらず、てんかん性発作のA又はBが年に2回未満、もしくは、C又はDが月に1回未満あり、かつ、労働が制限を受けるもの。

 

てんかんの認定のポイント

てんかんの認定は社会活動能力がどの程度損なわれているかを重視して認定されます。ポイントは下記の5つです。

・発作の重症度

・発作頻度

・発作がない期間の精神神経症状や認知障害の結果

・日常生活がどの程度損なわれているか

・社会的不利益をどの程度被っているか

さまざまな発作があり、発作がない期間に精神神経症状や認知障害がある場合で、治療の効果があまりなく日常生活に影響がある場合は、等級が上に認定される可能性があります。

てんかんの発作があっても、薬や治療によって発作が抑制されている場合は、原則として障害年金の対象とはなりません。

 

てんかんで障害年金を申請する場合のポイント

てんかんで意識を失うほどの発作が少ない場合、主治医は発作の回数から障害年金の対象外と判断する場合があります。しかし、てんかんで障害年金を申請する場合、意識を失う発作が多いか少ないかはポイントになりますが、それだけで判断されるわけではありません。

発作がない期間の状態も判定のポイントとなります。例えば、発作がなくても不安があったり、薬の副作用があったり、うつ状態だったりして日常生活に影響が出る場合があります。発作がない期間の状態も含めて日常生活能力を判定し、障害年金の対象となるかどうかを判断します。意識を失うような発作だけではなく、自分の意思に反して手が震えたり、ぼーっとしたりする小さな発作もあります。自分の症状がどのように出て、日常生活や仕事にどのような影響を与えているかを主治医にしっかり伝えることで、自分の状態をありのままに診断書に反映してもらうようにしましょう。

 

お問い合わせください

障害年金の申請についてご不明な点などがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので、遠慮なくご連絡をいただければと思います。

執筆者紹介

下斗米 貴彦
下斗米 貴彦
社会保険労務士 下斗米 貴彦(しもとまい たかひこ)

宮城県仙台市を中心に全国で障害年金申請をサポートしている。累計相談実績約600件(2024年6月現在)