【社労士が解説】精神障害における双極性障害とは?障害年金を申請する際のポイントを解説します
目次
精神障害のなかでも、今回は双極性障害についての解説です。
双極性障害の方は一定の基準を満たせば、障害年金を受給できます。
障害年金を申請する際のポイントも含めて、社会保険労務士である私が解説していきます。
双極性障害とは
双極性障害は、かつて躁うつ病とよばれていた病気で、気分が高揚し不自然なほど活発になる「躁状態」と、気分が落ち込む「うつ状態」の両方を繰り返します。
うつ病の一種と思われがちですが、うつ病とは異なる病気であり、治療法も異なります。
躁状態の程度によってⅠ型とⅡ型に分類されます。
躁状態が、社会生活に支障をきたすほど激しく大きい状態であれば双極Ⅰ型障害です。
本人も周りも「最近調子がいいな」と感じる程度の軽い躁状態であれば双極Ⅱ型障害といいます。
軽い躁状態では本人も周りも気づきにくいことから、うつ病との区別が難しく、正しい診断を受けるまで数年かかってしまうケースもあります。
症状の周期
症状がある時期と、ほとんどない時期を交互に繰り返します。
この間隔は人それぞれですが、うつ状態は数週間から半年間、躁状態は約1週間続く場合が多いです。
1年に4回以上もうつ状態と躁状態を繰り返す「急速交代型」の方もいます。
うつ状態と躁状態が混じって出現することもあり、この場合はうつ状態にありながら行動力もあるため、自殺のリスクが特に高くなり注意が必要です。
治療
激しい躁状態となる双極Ⅰ型障害では入院治療となる場合もありますが、主に通院での薬物治療と、病気と向き合い上手につきあっていくための心理社会的治療を行います。
薬物治療は躁状態の治療、うつ状態の治療、予防療法の3つです。
双極性障害は治療せずに放置すると再発する場合が非常に多く、再発を繰り返すうちに症状の間隔も短くなり、急速交代型になりかねないため予防療法が大切になります。
双極性障害は障害年金の対象です
双極性障害の方は、一定の基準を満たせば障害年金を受給できます。
障害年金とは、原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活に支障をきたしてしまった方へ、国から給付される公的年金です。
該当する障害であっても通知が来るわけではなく、「この制度を知っていて、申請をして、認定された方」だけが受給できる制度です。
障害年金を受給できると、生活への負担が軽減できるかもしれませんので、ぜひ活用しましょう。
ここからは障害年金を申請する際のポイントを解説していきます。
障害年金を受給するための要件
障害年金を受給するためには、まず前提として以下2つの要件を満たす必要があります。
1.初診日を証明できる
初診日とは、双極性障害に関連する症状で初めて医療機関を受診した日です。
必ずしも精神科とは限らず、不眠や食欲低下などの初期症状で内科を受診している場合は、その症状で内科を初めて受診した日が初診日になります。
2.初診日時点で、国民年金もしくは厚生年金・共済年金の保険料を納めている
年金保険料の未納がなければ、基本的にこの要件は満たしています。
免除期間は未納とはなりません。
初診日が20歳前の場合は年金保険料を納める義務がないため例外です。
双極性障害の認定基準
上記2つの要件を満たし、さらに日本年金機構が示す障害認定基準に該当している必要があります。
障害等級は1~3級までです。
日常生活において常に援助が必要な状態であれば1級。
部分的な援助が必要であれば、その程度によって2級となります。
3級は初診日の時点で厚生年金・共済年金に加入していた方のみ対象ですが「労働にどの程度の制限をうけているか」についても考慮されます。
障害年金の手続きの流れ
実際に障害年金を申請するにあたっての流れは以下の通りです。
1. 初診日を調べる
2. 市区町村役場もしくは年金事務所で必要書類を受け取る
3. 医師の診断書を依頼する
4. 病歴・就労状況申立書※を記載する
5. 年金手帳や住民票などの他必要書類を用意し、申請する
※病歴・就労状況申立書とは双極性障害を発病してから現在に至るまでの受診状況の経過や日常生活・就労状況などをご本人やご家族が記載する書類です。
障害年金を申請する際の注意点
申請にあたり、一番重要な書類は「医師の診断書」です。
よって医師に診断書作成を依頼する際は、受給に繋がるポイントをありのまま伝えていく必要があります。
診断書は障害年金用に指定された様式に記載されます。
双極性障害では特に、診断書裏面にある「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」がポイントです。
食事や清潔などの具体的な日常生活動作、対人関係、社会性等の項目があります。
双極Ⅱ型障害の場合、躁状態が軽度なため、評価されにくい面があります。
よって、うつ状態について重点的に伝えると良いです。
双極Ⅰ型障害の場合は躁状態が激しく大きいため、周囲の方への迷惑行為となっていたりして、ご本人・ご家族も大変な思いをしているでしょう。
躁状態の時、ご本人は無自覚のため受診を拒み、一番症状が強く出ている状態を医師が診たことがない場合もあります。
医師にはありのままの状態、特に「日常生活や社会性において影響が出ている部分」を詳しく伝え、診断書に反映してもらえるようにしましょう。
まとめ
今回は精神障害である双極性障害について解説してきました。
障害年金制度の複雑さゆえに、この制度を知っても申請を先延ばしにしたり、諦めてしまう方もいます。
障害年金を受給できると生活への負担が軽減でき、もっと治療に集中できるかもしれません。
諦めず、前向きに申請を検討してみてください。
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