【社労士が解説】障害年金と知的障害について
知的障害とは、「発達期(おおむね18歳まで)に生じる知的発達の遅れにより、日常生活や社会生活に持続的な支障があり、何らかの援助が必要な状態」をいいます。
知的障害は障害等級の1級か2級に該当していれば、障害年金を受給できます。
療育手帳の判定が軽度だから障害年金は受給できない、と申請を諦める方がいますが療育手帳と障害年金は別の制度です。
療育手帳が軽度でも、障害年金を受給できる可能性はあります。
ここでは、知的障害で障害年金を申請する際のポイントを解説していきます。
知的障害では障害等級該当要件のみ必要
障害年金は原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった場合、通常以下3つの要件を満たせば受給できます。
- 初診日(初めて医療機関を受診した日)証明要件
- 年金保険料納付要件
- 障害等級該当要件
知的障害では初診日が出生日と認められるため、初診日の証明は不要です。
初診日が20歳前の場合は年金保険料を納付する義務がないため、年金保険料納付要件も不要となります。
よって知的障害で障害年金を受給するために必要な要件は「障害等級に該当していること」のみです。
知的障害における障害認定基準について
知的障害では障害等級の1級か2級に該当する必要があります。
基準として3級は存在しますが、初診日時点で厚生年金を納付していた場合のみであり知的障害では多くの場合、非該当です。
日常生活において全面的な援助が必要な状態であれば1級。
部分的に援助が必要な状態であれば、その程度によって2級に該当します。
知能指数(IQ)と日常生活能力を総合的に判断する
知能指数(以下IQ)のみに着眼することなく、日常生活のさまざまな場面における援助の必要度を考慮し総合的に判断します。
よってIQが高くても、日常生活で必要な援助の割合が多ければ2級に該当する可能性はあります。
日常生活能力は1人暮らしを想定した上での判定となります。
療育手帳は参考資料
療育手帳の有無や区分も考慮されます。
療育手帳が軽度だからといって、必ずしも障害等級が非該当になるわけではありません。
障害年金は国の制度、療育手帳は都道府県の制度であり基準も異なります。
療育手帳を持っていなくても受給できる場合もあります。
就労していても受給可能
就労しているから受給できないということはありません。
仕事の種類、内容、就労状況、仕事場で受けている援助の内容、他の従業員との
意思疎通の状況等が考慮され、場合によっては受給可能です。
ただし所得制限があり、前年の所得額が4,621,000円を超える場合は全額が支給停止、3,604,000円を超える場合は2分の1の年金額が支給停止となります。
知的障害で申請する際のポイント
障害年金の申請は20歳到達日(20歳誕生日の前日)から可能となります。
認定されれば20歳到達日が「障害認定日」となり、その翌月から受給開始となります。
初診日は出生日なので、申請の際は20年の経過を振り返らなければなりません。
申請にあたって「医師の診断書」とご本人やご家族等(社労士が代筆可能)が記載する「病歴・就労状況等申立書」が必要であり、これら2つの整合性も求められます。
知的障害で障害年金を申請する際のポイントを解説していきます。
在学中から少しずつ準備する
申請は卒業後になりますが、特別支援学校等に在学中は親同士で情報共有ができたり、教員の方が将来設計を一緒に考えてくれたりと支援が受けやすい環境です。
在学中から少しずつ障害年金の申請を視野に入れて、準備しておきましょう。
20歳になったらすぐに申請する
20歳到達日以降いつでも請求することは可能です。
しかし過去の分を遡って請求するとなると、20歳到達日時点で障害等級の1級か2級に該当していたことを、医師の診断書を通して証明が必要であり、ハードルが高くなります。
満額受給できるよう、早めに申請しましょう。
診断書作成は早めに
診断書はそれぞれの障害によって様式が異なり、知的障害で申請の際は「精神の障害用」を用いて医師は作成します。
よって精神科、心療内科等で作成を依頼することになります。
既に経過を把握している医師が身近にいる場合は良いですが、そういった方は少ないのではないでしょうか。
初めて行った病院で、いきなり診断書の作成を依頼しても作成してもらえない可能性が高いです。
「20歳前後3ヶ月以内の診断書が必要」であることを考慮し、数回の通院を通して、これまでの状態や経過を少しずつ医師に理解してもらう必要があります。
必要なタイミングで診断書を受け取れるよう、早めに病院の目星をつけ、早めに通院を重ねておく事が大切です。
病歴・就労状況等申立書も補足資料として大切
障害年金における審査で、一番重要な書類は医師の診断書です。
しかし、病歴・就労状況等申立書も「医師の診断書の補足」として大切な書類であり、診断書との整合性が求められます。
診断書の内容を確認した上で、日常生活で支障が出てきた部分や、他者との意思疎通の状況など知的障害の経過を具体的に記載しましょう。
まとめ
障害年金制度は複雑になっていて、申請も大変な作業です。
よくわからない、難しいからと諦める方もいます。
しかし支給期間によっては、数千万円程の支給になる方もいて、生活への負担が大幅に軽減できるかもしれません。
知的障害が軽度でも、受給できる可能性があります。
あきらめず、前向きに申請を検討してみてください。
お問い合わせください
障害年金の申請についてご不明な点などがございましたらどんな些細なことでも構いませんので遠慮なくご連絡をいただければと思います。
執筆者紹介
最新の投稿
- 11月 5, 2024コラム「仕事に行きたくない…」と朝泣くほどつらい方へ|原因4つとNG行動
- 10月 4, 2024コラム傷病手当金が切れたら?うつ病が治らない場合は障害年金の申請準備を!
- 9月 27, 2024コラム統合失調症で仕事ができない?公的支援を活用した働き方を社労士が解説
- 9月 9, 2024コラムうつ病と仕事を両立させた働き方|障害年金を受給しながら働く選択肢