自分で申請しようとしたが不安になり相談。うつ病で遡及請求も認められた事例
相談者情報
派遣社員として勤務中にうつ病を発症。自分での手続きに限界を感じ、障害厚生年金3級(遡及請求)が認められた30代女性の事例
結果
障害厚生年金 3級 (認定日請求(遡及請求)および 事後重症請求 ともに受給決定) 平成28年1月より遡及分を含め約6,806,000円が認められた。
相談時の状況
A様(30代女性)は、派遣社員としてハウスメーカーの事務職に従事していましたが、結婚を控えた時期に突然、強烈な倦怠感や「消えてしまいたい」という希死念慮に襲われるようになりました。特に職場でのトラブルや長時間労働があったわけではありませんが、感情のコントロールが効かなくなり、不眠と過眠を繰り返す日々が始まりました。
当初は「漢方で様子を見よう」というクリニックに通っていましたが改善せず、ご家族の勧めで転院。投薬治療を続けながら、一時は「良くなった」と思い込み再就職を試みたものの、わずか4ヶ月で体調が悪化し退職を余儀なくされました。
ご相談いただいた時点では、ご主人様のサポートなしでは食事の準備や入浴などの身の回りのことがほとんどできない状態でした。A様は当初、ご自身で年金事務所へ行き手続きを進めようとされましたが、「病歴・就労状況等申立書」の作成において、ご自身の複雑な症状の波や経過をどう文章にしてよいか分からず、強い不安を感じて当センターへご連絡をいただきました。
社労士による見解
A様の場合、初診日が厚生年金加入期間中であったため、「障害厚生年金」の対象となります。ポイントは以下の2点でした。
- 遡及請求(過去にさかのぼっての請求)の可能性 初診から1年6ヶ月経過した時点(障害認定日)から現在まで症状が継続しているため、過去分の年金もまとめて請求する「遡及請求」が可能と考えられました。初診時のカルテ(電子カルテ)が残っていたことが大きなプラス材料でした。
- 就労の失敗と日常生活能力の評価 A様は障害認定日の後に一度就労を試みていますが、短期間で退職されています。一見「働けていた」とみなされ不利になるリスクもありますが、実態は「無理をして働いた結果、症状が悪化し継続できなかった」というものでした。この事実を正確に申立書に反映させることで、むしろ障害の重さを証明できると判断しました。
受任してから申請までに行ったこと
- 遡及診断書の作成依頼サポート 現在通院中の病院に対し、過去(障害認定日当時)の状態についての診断書作成を依頼しました。当初、医師からは作成について曖昧な返答がありましたが、A様を通じて粘り強く確認を行い、無事に作成をご快諾いただけました。
- 病歴・就労状況等申立書の作成 A様が最も不安を感じていた書類です。ヒアリングを重ね、以下の点を重点的に記述しました。
- 3ヶ月周期で訪れる「悪化」と「比較的安定」の波があり、安定していてもそれは一時的であること。
- 再就職時の勤務実態(実際には業務を遂行できず、周囲に迷惑をかけてしまった苦悩など)。
- 日常生活(食事、入浴、着替え等)において、ご主人の常時のサポートが不可欠である現状。
- ご本人との連携 LINEや電話を活用し、細かな確認事項や診断書の記載内容のチェックを綿密に行いました。特にA様は体調の波が激しかったため、体調が良いタイミングを見計らってやり取りを進めました。
結果に対する社労士の感想
申請から約3ヶ月後、無事に障害厚生年金3級の証書が届き、遡及分も含めた一時金の支給が決定しました。
ご自身で手続きを始められたものの、申立書の作成でつまずき、精神的な負担を感じていらっしゃったA様。「自分だけでは絶対に最後まで辿り着けなかった」とのご感想をいただき、大変安堵いたしました。特に今回は、過去にさかのぼる診断書の取得に関して、医師への依頼の仕方などをアドバイスさせていただいたことが、遡及決定への大きな鍵となりました。
経済的な不安から「働かなければ」と焦り、その結果体調を崩す悪循環に陥っておられましたが、今回まとまった一時金と定期的な年金受給が決まったことで、まずは安心して治療に専念できる環境が整いました。A様の心が少しでも軽くなり、穏やかな生活を取り戻されることを願っております。
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