【社労士が解説】乳がんで障害年金を申請する際のポイントを解説します
乳がんと診断された方は障害年金を受給できる可能性があります。
今回は乳がんで障害年金を申請する際のポイントを社会保険労務士である私が解説していきます。
乳がんとは
乳がんとは乳房にある乳腺にできる悪性腫瘍のことをいいます。
多くは乳管からがん細胞が発生しますが、稀に小葉から発生することもあります。
乳管や小葉にがん細胞がとどまっているものを「非浸潤がん」。
乳管や小葉を破りがん細胞が浸潤していくと「浸潤がん」となります。
浸潤がんでは血管やリンパ管に入って他の臓器に運ばれるため、遠隔転移することが多いです。
乳がんは早期発見できれば治る可能性が高いですが、初期症状が乏しいため早期発見が難しいという特徴があります。
乳がんの診断を受けたときには既にリンパ節や脳・骨・肺・肝臓などの臓器に遠隔転移をしてしまっているケースもあります。
治療としては乳房部分切除術や乳房全切除術などの手術療法、抗がん剤を使用した薬物療法、放射線療法などです。
障害年金を受給するための3つの要件
障害年金とは原則20歳~64歳の方を対象とし、病気やケガが原因で日常生活や就労に支障をきたしてしまった場合に受給できる公的年金のことです。
以下3つの要件を満たす必要があります。
- 初診日(乳がんの症状で初めて医療機関を受診した日)が証明できる
- 年金保険料を一定期間納付しており未納がない
- 障害等級に該当している
初診日が20歳前の場合は年金保険料を納める義務がないため例外です。
初診日時点で国民年金に加入、もしくは初診日が20歳前の場合は「障害基礎年金」となり、障害等級は1級と2級があります。
初診日時点で厚生年金・共済年金に加入していれば「障害厚生年金」となり、障害等級は1~3級まであります。
乳がんの障害認定基準
乳がんでは「悪性新生物による障害」を基準として認定されます。
障害年金は病気を基準とするのではなく、症状の程度と日常生活にどの程度の支障が出ているかが重要です。
乳がんで障害年金を申請する際に使用する医師の診断書は「血液・造血器・その他の障害用」の様式となります。
日常生活状況として診断書にも記載される、ア~オの5段階に区分した一般状態区分表という基準があります。
(ア) | 無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発症前と同等にふるまえるもの |
(イ) | 軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、業務など |
(ウ) | 歩行や身の回りのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの |
(エ) | 身の回りのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの |
(オ) | 身の回りのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲が概ねベット周辺に限られるもの |
この一般状態区分表のウ~オに該当する場合は障害年金を受給できる可能性が高いと言われています。
簡単に解説すると、寝たきり状態で活動範囲がベッド周囲に限られており、常に援助が必要な状態であれば1級。
寝たきりではないが日中も横になっている時間が多く、部分的に援助が必要な状態であれば、その程度によって2級の可能性があります。
3級は初診日の時点で厚生年金・共済年金に加入していた方のみ対象ですが「労働に制限をうけているか」についても考慮されます。
乳がんで障害年金を申請する際のポイント
障害年金は書類のみで審査が行われます。
障害年金を申請する際にポイントとなる書類は以下の通りです。
【医療機関で記載してもらう書類】
- 受診状況等証明書(初診日を証明する書類)・・・初診の医療機関と診断書作成を依頼した医療機関が同じ場合は不要。
- 医師の診断書
【本人やご家族が記載する書類】
- 病歴・就労状況等申立書(発症してから現在までの経過を記載する書類)
乳がんにおける具体的なポイントを解説していきます。
初診日に注意
乳がんと診断される前に乳腺線維腫瘍と診断されたことがあり、関連性があると思い初診日を乳腺繊維腫瘍に関連する症状で受診した日と考えられる方もいます。
しかし良性腫瘍と悪性腫瘍は別の傷病です。
乳腺線維腫瘍ががん化することはなく、あくまで乳がんに関連する症状で初めて受診した日が初診日となるため、注意してください。
重要書類は医師の診断書
申請にあたり最も重要な書類は、医師の診断書です。
しかし乳がんでの申請に用いられる「血液・造血器・その他の障害用」の診断書にはがん専用の項目はありません。
症状や治療の副作用によって、どのような影響が出ているかを医師に具体的に記載してもらう必要があります。
乳がんでは障害年金は受給できないと思っておられる医師もおり、障害年金における診断書の作成に慣れていない場合もあります。
受給に繋がるポイントが記載されていない診断書で申請すると、不支給となる可能性が高いです。
診断書の作成を依頼する際は、日常生活において支障がでている部分を、医師に明確に伝えましょう。
事前にメモにまとめておくなどをして、伝わりやすいよう工夫することも大切です。
診断書作成の依頼に不安がある場合は、障害年金のプロである社会保険労務士に相談することもできます。
病歴・就労状況等申立書も大切
病歴・就労状況等申立書も診断書の内容を補足する書類として大切です。
症状や日常生活状況の詳細など診断書では詳しく記載できないような部分を明記し、アピールしましょう。
診断書の内容と矛盾があると、不支給に繋がりますので整合性のある内容にしてください。
併合認定で上位等級を狙う
乳がんでは治療の後遺症によって手や腕の痺れ、歩行障害などの障害がある場合もあります。
この場合は「肢体の障害」を組み合わせて申請することも検討しましょう。
診断書が2枚必要になり大変な作業になりますが、上位等級となる可能性が高くなります。
遠隔転移による障害など、他の障害によっても日常生活に制限がある場合は、組み合わせて申請することも検討しましょう。
まとめ
障害年金制度は複雑な制度です。
診断書でも注意する点が多く、医師との綿密なコミュニケーションが鍵となります。
大変だからと諦める方がいますが、障害年金を受給できると生活への負担軽減ができます。
諦めず前向きに申請を検討してみてください。
お問い合わせください
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⑥加入年金制度の種類と加入状況、⑦傷病名(診断傷病名)
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